前事務局長・弁護士 井上 耕史
2017年8月26日、民法協第62回定期総会を大阪グリーン会館2階大ホールで開催し、79名が参加しました。
萬井会長は、開会あいさつで、総会の目的の一つとして民法協の活動の全体を知ることができることを挙げ、幅広い分野で会員が自主的に活発な取組みが行われていることを紹介しました。
第1部の記念講演は、脇田滋龍谷大学名誉教授に、「労働尊重社会実現の課題――日韓『働き方改革』論議を比較して」との演題で講演していただきました。
脇田先生は、政府による労働規制緩和の歴史と雇用の急激な劣化を指摘し、とりわけ85年制定の派遣法を「毒の缶詰」と厳しく批判しました。そして、安倍政権の労働政策の核心は解雇の自由拡大と派遣法改悪による正社員ゼロにあること、「働き方改革」は長時間労働の追認・悪化であり、「同一労働同一賃金」も名ばかりであることを明らかにしました。これと対比して、韓国では、朴元淳ソウル市長により非正規職の正規職転換等の労働政策改革が進められ、韓国新政府もソウル市の改革を受け入れていること、これらの改革が日本の革新自治体の政策から学んでいることを紹介しました。日韓の違いの原因として、韓国の労組は企業別から産別への切替えが進みつつあり、最も弱い労働者を引き上げる取組みをしていること、これは民法協の活動にも共通しており、日本の労働運動前進のカギがそこにあることを指摘されました。
第2部の総会議事では、「民主法律」総会特集号に基づき、2017年度の活動報告と2018年度の活動方針案の提案の後、以下の5件の特別報告がありました。
①泉佐野市不当労働行為事件勝利解決(増田尚弁護士)
②松原中央公園使用拒否事件全面勝訴(長岡麻寿恵弁護士)
③「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」の活動(中平史弁護士)
④裁判・労働委員会闘争と弁護士会の課題(原野早知子弁護士)
⑤労働法教育をめぐる情勢と課題(清水亮宏弁護士)
この後討論を行い、道徳の教科化、教科書問題、9条改憲の情勢、労働運動・裁判闘争のあり方、ヘイトハラスメント裁判について意見交換しました。
幅広い分野の課題を扱いながらもそれぞれが関連しあっていることがわかる、民法協らしい報告、討論になりました。
活動方針案、決算報告・予算案については、いずれも満場一致で採択されました。続いて、以下の2本の決議も満場一致で採択されました。
・憲法の破壊、9条の改悪を許さず、その阻止のために力を尽くす決議
・真の長時間労働是正と非正規労働格差是正を実現するための労働法制の抜本的改正を求める決議
また、2018年度の役員選出が行われ、退任・新任事務局から挨拶があり、総会を閉じました。
総会後の懇親会には、46名が参加して懇親を深めました。
今秋の臨時国会では、「働き方改革」一括法案や、自民党改憲原案が提出される可能性があり、まともな働き方実現と憲法改悪阻止が大きな課題です。また、有期雇用の無期転換、派遣労働者受入れの上限といった「2018年問題」もあります。須井新事務局長をはじめとする執行部のもとで、学習・宣伝活動、相談・事件活動を飛躍的に強めていきましょう。