民主法律時報

労働相談入門講座 報告―― 新人弁護士が労働相談を受ける際に持つべき視点 ――

弁護士 西川 裕也

1 はじめに
2017年1月31日、大阪弁護士会館において、若手弁護士及び司法修習生を対象とした、労働相談についての入門講座が行われました。講師は、村田浩治弁護士でした。
本講座は、村田弁護士が、普段の業務において労働相談を受ける時に心がけていることを踏まえながら、労働法の基礎を分かり易く説明していただくという内容で、民法協に入会されている労働組合の組合員の方々もたくさん参加されていました。
村田弁護士の話は、一般的な労働法の知識、実務的な知識の両方の知識を身に着けることができ、弁護士登録をして日の浅い私にとって、とても勉強になるものでした。その中でも特に印象に残ったことを述べていきます。

2 労働問題特有の難しさ
労働者側からみた労働事件の難しさとして、労働契約の非対等性があげられます。労働契約が継続している間は、労働条件の改善などを使用者に求めることは困難であり、解雇されたことを争う場合には、生計が立てられず裁判どころではないことが殆どです。このようなことから、労働者は実質的に不利な条件を強いられていると村田弁護士は考えていました。
確かに、理論的には正当な権利を主張できる事案であっても、相談に来られた労働者の方の家庭環境、生活状況によっては、直ちに裁判をする、ということが常に正しいとは限らず、交渉による早期解決を目指す場合もあるということは、アドバイスをする弁護士としても理解しておく必要があります。このような考え方は、法律を学ぶのみでは得れるものでなく、様々な問題が混在する労働分野の実務にとって、とても大切なことだと感じました。

3 労働相談において大切なこと
労働相談を受けるに際しては、労働問題が様々な事案類型があることから、「相談に来られた方が求める解決は何か」を的確に把握して、適切な方針を決定することが重要であります。
例えば、不当解雇事案において、労働者が職場復帰を求めるのか、金銭的な解決を求めるのかで、今後採るべき方針は大きく変わります。また、2006年から導入された労働審判制度によって、そもそも労働者が選択すべき法的手続きも変わってくる可能性があります。
このように、労働相談においては、初めに、相談者から、現状をどのように解決したいかを的確に聞き出せるよう相談の仕方を工夫する努力をすることが大切です。
そのうえで、弁護士として正確な法律知識に基づくアドバイスをすることが必要であり、日々研鑽を怠らず、最新の議論にも目を通していくことが必要なのだと感じました。

4 本講座を受けて
最後に、本講座は若手弁護士等を対象とした労働相談の入門講座でありましたが、労働問題は現在の社会で一番身近な問題であり、弁護士としては避けては通れない問題に対して、実務経験の浅い新人弁護士や修習生にとって、とても勉強になるものでした。
まだまだ、第 期弁護士として駆け出しの身ではありますが、今後の弁護士活動に大いに役立たせていただき、相談に来られた方の力になれるよう、努力していきたいと思います。

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