「過労死等防止大阪センター」(仮称)結成準備会 事務局長 柏 原 英 人
11月20日、エルおおさかで「過労死等防止啓発月間シンポジウム」が開催されました。主催は「過労死等防止大阪センター(仮称)」結成準備会で大阪労働局、大阪府から後援をいただき、大阪労働局、連合大阪、大阪労連、大阪全労協から挨拶を受けました。
行政、労働3団体が一堂に会し挨拶をしていただくという画期的な集会となりました。集会の参加者は141名で、開会挨拶、来賓挨拶、基調講演、過労死を考える家族の会訴え、基調報告、閉会挨拶はいずれも迫力、臨場感あふれるもので大阪における過労死防止にむけての大きな第一歩となりました。
過労死問題のスタートは、過労死を救済するために1981年7月に大阪で「急性死等労災認定連絡会」が結成されたことでした。30年間の取り組みにもかかわらず、その後も過労死がなくならず高止まりし過労自殺が若者に広がるなかで2011年11月18日「過労死防止基本法制定実行委員会」が結成されました。
3年にわたる立法制定運動の結果、55万筆を超える賛同署名が集まり大阪府議会を含む121の地方議会で法制定を求める意見書が採択され、2013年6月には法制定を求める超党派議員連盟が発足し130名の議員が参加するまでになり、2014年6月20日に「過労死等防止対策推進法」(略称過労死防止法)が成立しました。
法律の施行は通常は成立後半年以降ですが、過労死防止基本法制定実行委員会、特に過労死を考える家族の会の「一刻も早く過労死をする人を救いたい…」という強い思い、要請で過労死防止法はこの11月1日より施行実施されることになりました。11月 20日のシンポジウムは、この11月が最初の「過労死等防止啓発月間」となっているなかで全国的な啓発行事の一環として開催されました。
最初に関西大学名誉教授・過労死防止全国センター代表幹事の森岡孝二先生より「国、地方自治体と民間団体が手をたずさえて過労死防止に取り組んでいく新しいページが開かれた」と開会の挨拶があり、その後高井吉昭大阪労働局労働基準部長と労働3団体の代表より過労死防止にかける熱い思いのこもった来賓挨拶をいただきました。
基調講演で松丸正弁護士は1981年からの大阪の過労死救済の歴史を振り返り、1981年7月の「急性死等労災認定連絡会」の発足や田尻俊一郎医師の先駆的な取り組みの話をされその中で何よりも「過労死防止には使用者による労働時間管理・把握が不可欠である」ことを強調され「過労死救済元年から過労死防止元年へ」と結ばれました。
過労死を考える家族の会7名の訴えは、「何としてもこの日本から過労死をなくしたい、自分たちのような悲しい思いをする家族をこれ以上つくらない」という強い思いの臨場感溢れるもので参加者の涙をさそい「過労死はあってはならない」と全員の心を一つにするものでした。わたしはあらためてこの過労死防止運動は過労死を考える家族の会とともにあることを痛感しました。
岩城穣弁護士の基調報告では、過労死防止法は、(1)過労死のない社会の実現を目指して過労死防止対策の効果的な推進を国と地方自治体の責務としたうえで(2)①過労死に関する総合的な調査研究、②国民に対する教育・広報を通じた啓発、③過労死に関する相談体制の整備、④過労死問題に関わる民間団体の支援の「4つの防止対策」をおこなうこととし、(3)その推進のために過労死遺族も加わった「協議会」の意見を聞いて「過労死等防止対策大綱」を作り毎年「過労死白書」を出し、(4) 調査研究の結果必要と認めるときは法制上・財政上の措置を講ずることなどを定めていると説明されました。したがってわたしたちのこれからの具体的な過労死防止の取り組みが大変重要になると結ばれました。
集会宣言が採択された後、閉会の挨拶があり林裕悟弁護士が「法律は出来たけれども過労死防止を具体的にどうすすめていくかはまだ何も決まっていない、法律を実効性のあるものにするためにぜひ皆様の過労死防止大阪センターへの参加をお願いします。」と締めくくりました。
過労死防止法は労働法の戦後始めての改善といわれる画期的な法律です。しかしこの法律を活かし過労死をなくしていく取り組みをすすめていかなければ意味がありません。過労死防止法に「魂」をいれ、国民の意識改革と具体的な制度改革につなげていくためには、幅広い民間団体や専門家が力をあわせ、国や地方自治体と連携して、調査研究、教育・広報活動を通じた啓発や相談体制の整備を推進していくことが求められています。まだ準備段階ですが、近く「過労死防止大阪センター」も正式にスタートする予定です。
過労死防止を願うすべての労働組合、市民団体、経済団体などに呼びかけて、国や地方自治体が行う過労死に関する調査研究の推進、教育・啓発、過労死の予防・救済のための取り組みに連携していきたいと考えています。過労死がない社会を実現するための活動に、立場を超えて多くの人々に賛同してもらい、共同してこの大阪から日本から過労死という言葉が死語になるよう取り組んでいきたいと思います。