弁護士 岩 佐 賢 次
2014年7月13日(日)午後1時半から国労大阪会館で標記のシンポジウムが行われました。
「ほんまにええの? TPP大阪ネットワーク」は、農民組合大阪府連合会、大阪府民主医療機関連合会、全大阪消費者団体連絡会、TPPに反対する弁護士ネットワーク、民法協など28の団体から構成されており、当日は各団体から 名が参加しました。
今回のシンポジウムでは、雇用・労働法制・中小商工業者・医療・保育の4分野からパネリストが集まりました。今回は「雇用・労働法制規制緩和」分野を中心に報告します。
「雇用・労働法制規制緩和」分野では、民法協会員であり、TPPに反対する弁護士ネットワーク事務局でもある杉島幸生弁護士から報告がありました。
まず、TPPは何のため、誰のためにある条約なのかという問いかけから始まりました。先行4か国が作ったオリジナルTPPを読めば、TPPとは大企業・多国籍企業が経済的利益を最大限図るために、そのルールを整備するものだと断言され、これが参加者の共通認識となりました。
次に、労働の章(労働の交渉分野)では労働法制の規制そのものは議題になっていない、だから大丈夫、安心であると政府が説明していることについて、杉島弁護士は、確かに労働の交渉では労働法制の規制そのものはテーマになっていないが、だから大丈夫、安心とは決して言えないと警鐘をならしました。すなわち、TPPは21の交渉分野があり、労働法制は、労働の章以外の分野で別個に議論され、労働法制への影響は避けられないとの指摘がありました。例えば、TPPで国内農業がダメになれば、340万人が雇用機会を喪失すると農水省の試算があるし、また、外国人の労働者の流入が、一時的入国として企業内労働者の移転の自由化がなされることや、国際派遣会社をつくって登録型派遣社員を海外に派遣したり、海外の子会社が採用した労働者を自国で働かせることなど外国人労働者の流入はとめられないのではないか、さらに、外国人労働者に日本の労働法制が適用されるのかという問題もあり、日本の労働市場のなかに、正規労働者群、非正規労働者群、外国人労働者群の三重構造ができあがるのではないかなど、TPPが労働市場にあたえる影響力は極めて大きなものとなるとの予測を示しました。
また、企業の投資活動の自由は、労働法制の緩和をよびよせるとの指摘がありました。
すなわち、投資の章では、いかに投資家の活動をしやすくなるかという観点から、投資家の利益を損なうような予測不可能な法改正はしてはならないルールづくりが議論されていますが、解雇規制や残業代規制を強化することは、投資家の利益を損なう規制として許されなくなります。逆にジョブ型正社員・残業代ゼロ制度・金銭解決制度などいったん規制緩和された制度を運動の力で跳ね返すことは、TPPのルールに反することとなり、困難となります。
最後に、TPPの交渉内容は公表されていませんが、今ならまだ間に合う! 労働分野からTPP反対の声をあげよう! と力強い言葉で締めくくられました。