民主法律時報

2014年新人学習会 第2回「STOP 過労死・過労自殺」ご報告

弁護士 和 田   香

 民法協新人学習会第2弾は大阪過労死問題連絡会と共催で「STOP 過労死・過労自殺」と題し、ご遺族のお話を伺うと共に、労災申請、民事訴訟手続きについて上出恭子弁護士を講師として学習を行いました。
 学習会に来て下さった遺族の方は、大手飲料水メーカーの販売会社の下請け会社に念願の正社員として入社したご長男を入社から約3か月で亡くされました。ご長男は大学を卒業した後、就職難のあおりを受け正社員として就職することができず、非正規社員として働きながら正社員になろうと採用試験を受け続けておられました。その中でようやく掴んだ正社員の座です。仕事は肉体的にも精神的にも過酷でしたが、頑張って早朝から遅くまで働き続けたご長男はみるみる痩せ、以前は朗らかな性格だったのが口数も少なくなり、ご家族は体調を心配されていました。過酷な仕事内容で職場の先輩らも余裕がなかったのか、新人であるご長男に助言するどころか罵声を浴びせる状態でしたが、ご長男は先輩らも大変なのだと逆に気遣っていたそうです。ところが入社から3か月後、試用期間が終了して会社から交付された労働条件通知書には「契約社員」と記載されていました。その暫く後、ご長男は出社準備を整えた姿で自宅で縊死されました。ご長男の死亡前の残業時間は月約104時間に上りましたが賃金は19万4091円でした。
 このご遺族のお話には、若者を低賃金、過重労働で使いつぶすという現在の労働現場の問題が凝縮されているように思います。私はご遺族が労災申請に向けて準備中、丁度修習生として打ち合わせに同席させて頂いたことがありますが、そのときに受けた衝撃を忘れることができません。今回の学習企画でも、このような過酷極まりない条件で若者を働かせることができる労働環境が有名企業であってもまかり通っていることの不条理を、直にご遺族の方からお話を伺うことで深く実感したという参加者の感想が多く寄せられました。
 講師の上出弁護士は、このご遺族の事件も担当されていました。労災申請は、一般の弁護士が頻繁に取り扱う分野ではありません。そのため、申請に当たっていかなる準備をすべきかという基本から講義を頂きました。その中で、労災申請とは単に行政に請求用紙を提出するのではなく、行政の労災認定における基準をよく理解して代理人意見書を提出し、当該事案において何がポイントなのかを明確に労基署等に伝えることが大切であることがよく分かりました。
 今回の学習企画は、参加者多数の中、代理人と当事者双方から貴重なお話を伺うことができ非常に有意義な会となりました。講師の上出先生、ご遺族の方、大変ありがとうございました。

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