弁護士 上 出 恭 子
2013年11月12日、大阪市中之島中央公会堂小会議室にて、NPO法人・働き方ASU―NETと大阪過労死問題連絡会との共催で、森岡孝二先生が本年8月に出版された『過労死は何を告発しているか――現代日本の企業と労働』(岩波現代文庫)の出版記念講演会が開かれ、52名が参加しました。
会の冒頭、落語家・桂福点さんが、森岡先生の印象を交えて自己紹介をされたあと、ブラック企業をもじった小咄等を何点かされて和やかなスタートで始まりました。
続いて、過労死が「急性死」と言われていた時代から一貫して過労死問題に関わってこられた松丸正弁護士、1988年4月全国に先駆けて大阪で始まった過労死110番の第1号事件である平岡事件の当事者の平岡チエ子さん、過労死防止法制定実行委員会の事務局長を務める岩城穣弁護士、若者の労働問題に取り組むNPO法人京都POSSE事務局長の岩橋誠さん、地域労組おおさか青年部書記長の北出茂さんからそれぞれお話を頂きました。
最後に、森岡先生から「過労死社会ニッポンを語る――諸悪の根源は何か」と題してご講演をいただきました。「『根源』は自明、フルタイム労働者、特に男性正社員の超長時間労働にある」ことを冒頭に明言された上で、「諸悪」を中心に話をされました。超長時間労働がもたらす10大害悪として、「①睡眠時間が削られる、②過労死・過労自殺が増える、③女性の社会参加が阻まれる、④低賃金が構造化する(残業依存、低時給パート、サービス残業)、⑤失業と貧困が広がる(過労死予備軍と産業予備軍の併存)、⑥少子化が進む、⑦家族と地域が壊れる、⑧ブラック企業が蔓延する、⑨経済が衰退する、⑩社会変革が困難になる。」との指摘の後、その概要について言及されました。特に最後の⑩の点について、マルクスの指摘に基づく問題提起は、特に印象深いものでした。
閉会挨拶では、全国過労死を考える家族の会代表寺西笑子さんが、過労死問題を次世代に残したくないという遺族の強い思いが「過労死防止基本法」制定の実現に向けられていることを述べられ、過労死問題の抜本的な解決に向けての大きな取組の報告をされました。
参加者の誰もが、「過労死」が死語となる日を目指してそれぞれの分野で活動を進めることを再確認する、「大切な節目の会」であったことを参加者の一人として願っております。