弁護士 原 野 早知子
1 10月29日午後6時30分から、大阪府教育会館にて、大阪憲法会議・共同センター主催の「2013年 秋の憲法学習講座」が開催された。国家安全保障会議(NSC)設置法案・特定秘密保護法案が国会で審議入りし、緊迫する情勢の中、280名を超える参加者があった。
2 メイン講演は渡辺治一橋大学名誉教授で、縦横無尽に安倍政権の改憲戦略を語った。内容は極めて興味深く、機会を捉えて直接聞くことを勧めたいが、あらましは次のようなものである。
戦後改憲の波は日本国憲法成立直後から開始されたが(第一の波)、 年安保闘争で挫折した。自民党政権は明文改憲を一旦諦め「解釈」で「自衛隊合憲」を試みるが、訴訟を含む国会内外の運動で自衛隊は「解釈」上、数々の縛りをかけられた。最たるものが集団的自衛権行使禁止である。
冷戦終了後の90年代から、米国は「共に血を流せ」と日本に要求し、多国籍企業の海外での権益保護の要求も強まり、改憲の「第二の波」が開始された。順次、立法がなされイラクに自衛隊が「派遣」されたが、従来の9条「解釈」の縛りにより「海外派兵(海外での武力行使)」は実現していない。解釈で米国と財界の要求に応える限界が明らかになり、再度改憲策動が開始された。しかし、9条の会が全国的に広がり、第1次安倍政権は改憲を阻まれた。
現在(第2次安倍政権)の改憲策動では、解釈改憲(立法改憲含む)を先行させ、最終的に9条の明文改憲を行い、「戦争できる国づくり」を完成させようとしている。解釈改憲の動きとしては、内閣法制局長官を更迭し、60年代以来積み上げた「解釈」すらチャラにするほか、NSC法案・特定秘密保護法案・国家安全保障基本法案を立て続けに成立させようとしている。
3 では、改憲を阻む運動をどう作るのか。
渡辺氏は「9条改悪の一点で良心的な保守の人々とも共同を」と提唱している。野中広務・古賀誠・河野洋平ら自民党の領袖が、反戦への強い思いから赤旗で発信していることなどを重視し、戦略的共同の必要を説く。全く同感だが、具体的にいかに「良心的保守層」と繋がるかが私たちの運動の課題だろう。
渡辺氏は「『安保のように闘おう』とはもう言えない」とも述べた。安保闘争時(社・共が国会の3分の1を超える議席を有し共闘)とは、国会の勢力図が異なるからだという。
一方、渡辺氏は「第一の改憲の波」を解説しながら、「安保闘争がどのように改憲勢力を挫折させたか」を克明に説明した。私(1970年生)の世代以下は、「自分が動いて政治が変わる」経験に欠け、実感に乏しい。渡辺氏の講演は「現実に運動の力で権力の暴走・策動を食い止められる」ことを事実によって示すものだった。「安保のように闘う」ことはできなくとも、安保闘争の経験は重要な歴史的教訓である。
特定秘密保護法案に対し、急速に反対世論が高まっている。「自分が動けば流れを変える何かの力になる」という小さな確信から、出来ることを始めたい。