民主法律時報

オスプレイは憲法違反―そして、許せぬアメリカの治外法権―

弁護士 橋 本   敦

1 オスプレイは明白な憲法違反
 「オスプレイ来るな! あいば野大集会」(10月6日)は、全国各地から1000名をこす参加者が結集し、意気高き国民的抗議集会となった。「オスプレイ反対!」の声は、今、沖縄をはじめ日本中に高まっている。
 オスプレイの配備は、米海兵隊の先制攻撃・戦闘能力を飛躍的に向上させ、最強の遠征兵力にするのである。
 防衛省が公表した「オスプレイの普天間配備と日本での運用レビュー」でも、オスプレイ配備の目的は「世界中における戦争の支援」であるとし、「このオスプレイの配備によって、米海兵隊は考えられうる最も過酷な状況下でも交戦能力を有し、不確実な将来の戦闘作戦への即応性を有した迅速で決定的な遠征部隊となる。」と書いている。
 このような侵略的先制攻撃装備の日本への配備が、わが平和憲法9条を踏みにじるものであることは明白である。
 日本共産党の市田書記局長も、あいば野集会で次のとおり厳しく指摘した。
 「そもそもオスプレイは、米海兵隊が他国への侵略作戦を強化するためにつくられた輸送機であり、海兵隊の『侵略力』を強化するために配備されたのであります。そのオスプレイとどんな訓練をやろうというのか。防衛省が発表した訓練内容によれば、陸上自衛隊と米海兵隊が『ヘリボーン訓練』をおこなうと書かれています。『ヘリボーン』というのは、ヘリコプターを使って敵地へ部隊が侵入・奇襲し、目的地を制圧する戦術のことであります。ベトナム戦争やアフガニスタン戦争で特に多用された、まさに侵略戦争そのものであります。
 誰がなんといおうと『日本防衛』どころか、米軍と一緒に敵国を攻撃する演習以外のなにものでもありません。憲法9条をもつ日本では、絶対に許されない訓練であります。」
 まさにこのとおり、オスプレイの日本配備とその運用は、「専守防衛」を越えた「殴り込み部隊」の強化にほかならず、戦争の放棄を世界に宣言した我が憲法9条に違反することは明白である。
 われわれは「日本国憲法に違反するオスプレイは、アメリカへ帰れ」の声を大きく上げよう。

2 許せぬ治外法権の屈辱
 さらに、このオスプレイ問題を解明すると、そこにみえるのは、米軍の治外法権である。
 治外法権とは、「社会科学綜合辞典」(新日本出版社)では、「外国人が、現に居住する国の法律に拘束されない特権。日本では、日米地位協定および刑事特別法によって米軍基地内のアメリカ軍人・軍属などに治外法権があたえられている。」と書いてある。
 オスプレイが国民の大きな反対を無視して、日本の法律(航空法)に従わず、平然と日本の空を飛ぶのは、まさにこの治外法権である。

3 日米安保とオスプレイ
 オスプレイの危険の最大の問題は、そのオートローテイション(自動回転飛行機能)の欠如である。このオートローテイションとは、ヘリコプターのエンジンが停止して、機体が落下する際、プロペラが上向きの風を受けて揚力が生じるようにして着陸の衝撃をやわらげる機能で、これはヘリコプター運行に絶対必要なものである。従って、わが国の航空法では、このオートローテイション機能がないヘリコプターは飛行が禁止されている。すなわち、航空法施行規則の附属書第一「航空機及び装備品の安全性を確保するための強度・構造及び性能についての基準」の第二章「2―2―4―3」項は、「回転翼航空機は、全発動機が不作動である状態で、自動回転飛行(オートローテイション)により安全に進入し及び着陸することができるものでなければならない。」と定めている。このため、オートローテイション機能をもたないオスプレイは、危険な航空機であるとして所管大臣の「飛行安全証明」、すなわち「耐空証明」が受けられない。そうすると、わが国の航空法第  条は、「航空機は有効な耐空証明を受けているものでなければ、航空の用に供してはならない。」と定めているから、この証明が受けられないオスプレイは、わが国の航空法では、日本の空を飛ぶことはできないのである。
 しかるに、オスプレイはなぜ日本で飛行できるのか。なぜ、日本の法律(航空法第11条)に従わなくてよいのか。まさにそれが、アメリカの治外法権である。
 ところが、日本政府は、この米軍の治外法権を日本の法律によって容認する措置をとらされている。
 すなわち、日米安保条約第6条は、米軍の日本駐留を認め、その米軍の日本における軍隊の運用と基地利用の便益を容認するために、「日米地位協定」が締結されている。
 そして、この日米地位協定第3条では、「合衆国は施設及び区域において、それらの設定、運営、管理のため必要なすべての措置をとることができる。」とされ、それによって、アメリカの要求どおりにオスプレイの飛行を認める航空法の特例がつくられているのである。それが「日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」である。
 その特例法第2項は、次のように定める。
 「合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で同軍隊のために運行される航空機並びにこれらの航空機に乗り組んでその運行に従事する者については、航空法第11条の規定は適用しない。」
 何たることであろうか。こうして米軍機には、日本の航空に関する根本原則である航空法第11条が適用されないとされ、この特例によって、オスプレイは日本の法律の制約を受けずに飛行することが容認されているのである。
 まさに、この特例法なるものは、米軍の特権的治外法権を日本が認めさせられている屈辱的法律であることが明白である。
 しかも、今回のオスプレイの配備は、アメリカの日本に対する「接受国通報」という名の一方的発表によって強行され、事前協議も許さず、高度や騒音規制などの日本の法的規制も全く無視した無法な運用がまかり通っていることも断じて許せない。
 われわれは、今大きく高まっている「オスプレイ反対!」のたたかいを、憲法9条を守れの声を大きくするとともに、米軍の治外法権を認めさせられ、その屈辱と危険の対米従属の根源である日米安保条約そのものを廃棄せよとの大きな国民的平和のたたかいに進めて行かねばならない。

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