弁護士 岩 城 穣
1 「大阪過労死を考える家族の会」(略称:大阪家族の会)は1990年(平成2年)12月8日結成され、満22年を迎えた。1988年(昭和63年)に「過労死110番」が開設され、過労死の相談や労災申請が激増する中で、過労死遺族同士が互いに励まし合い協力し合って、過労死遺族・本人の救済と、過労死の予防に取り組むことを目的として、当時相談中や労災申請中の過労死遺族17家族、約60名が参加して結成されたのである。
翌1991年には、各地の家族の会が集まって「全国過労死を考える家族の会」が結成され、毎年11月の厚生労働省要請などを行っているが、大阪家族の会は、毎年夏に全国一泊交流会を主催するなど、全国の牽引車として大きな役割を果たしてきた。
最近では、全国家族の会の代表でもある寺西笑子さんが原告となった「過労死企業名公表裁判」と「過労死防止基本法」制定のための取り組みでも、全国家族の会の中心となって頑張っている。
2 大阪弁護士会は平成13年度から、社会的弱者の人権擁護活動等を行っている個人、グループ及び団体で、近畿地区に住所、事務所または活動の本拠を置くものに、毎年「人権賞」を授与している。
そして、大阪家族の会として、平成24年8月に応募したところ、受賞が決定したのである。
3 本年1月22日(火)午後5時30分から、大阪弁護士会館2階ホールで、「第12回大阪弁護士会人権賞授賞式」が行われた。
テレビカメラも入る中、金屏風に飾られた壇上に、選考委員の方々と大阪過労死家族の会の代表世話人の村上加代子さん、世話人の寺西笑子さんが登壇。
人権賞選考委員会委員長の武者小路公秀氏の開会のあいさつ、司会の島尾恵理弁護士(大阪弁護士会人権擁護委員会委員長)による選考委員の紹介の後、選考委員会副委員長の中川喜代子氏が選考経過を報告された。
中川氏は、本年は6件5団体の応募があった中から、大阪過労死家族の会が選考委員7名の満場一致で選ばれたことを紹介するとともに、受賞理由として、①20年以上の活動実績、②今後の活動の展望として「過労死防止基本法」の取り組み、③過労死が多発する大阪での活動への期待を挙げた。
続いて、大阪弁護士会の藪野恒明会長から村上加代子代表世話人に、表彰状と副賞が授与された。そして、寺西笑子さんが、受賞団体を代表してあいさつをされた。
寺西さんは、日本の労働者の働き方の現状、大切な家族を過労死で失った遺族の悲しみと労災申請の大変さ、過労死を根絶するための過労死防止基本法の制定のために頑張っていることなどを述べるとともに、栄えある人権賞の授与への感謝の言葉を述べた。
最後に、藪野会長が閉会あいさつを行った。
4 この賞は、自らの事件も闘いながら、大阪家族の会を立ち上げ、営々と地道な活動を続けてきたこの20年間の遺族の皆さん全員が受賞したものといえる。
また、4000人近い会員を擁する大阪弁護士会が「過労死防止基本法」の制定の取り組みを評価し、激励してくれたことは、防止法制定運動に取り組む全国の過労死遺族にとっても、大きな励みとなるものである。
なお、この授賞式の様子は、当日夜のテレビ朝日のニュースで紹介され、また翌日付けの朝日新聞でも報道された。