国土交通労働組合西日本航空支部 河 村 裕 治
昨年1月にJALが経営破綻し、8月に更生計画案を東京地裁に提出してから1年となる事から、民主法律協会関空プロジェクト会議では、JAL不当解雇撤回をめざす大阪支援共闘会議の協賛を得て、8月30日(火)「いきいきエイジングセンター」で約100人が参加したシンポジウムを開催しました。昨年9月に「関西の空を考える」シンポジウムを開催してから1年ぶりのこのシンポジウムでは、165名もの乗員、客室乗務員を不当解雇し更生計画を大幅に上回る営業利益を出したJALが果たして本当の意味で「再建」しているかを航空職場からの告発により検証しました。
最初に、ご自身もJALを解雇されたパイロットである航空労組連絡会事務局次長の和波宏明さんから、昨年12月31日の不当解雇からの解雇撤回闘争の経緯が説明されました。その中で、JALの営業利益は更生計画の目標を大幅に上回り超優良企業に急速に変貌したが、地方の不採算路線や機材の小型化で座席数を相当削り、乗りたいときに乗れない航空会社になってしまったこと、「整理解雇の4要件」を全く無視した解雇であること、そもそもJAL破綻の原因が放漫・乱脈経営や航空行政の誤りなどであること、「利益なくして安全なし」といった体制になってしまったJALでは、ありえない基本的間違いがいっぱい起きていると指摘しました。そして、今回の解雇撤回裁判を、労働対資本、安全対利益の闘いと位置づけ、経営者の態度を改めさせ、安全と公共性を最優先とするJALの再生を目指すために被解雇者のみならず、希望退職した人も呼び戻し、適正な事業拡張をすべきとし、来年のいい報告と今後の展望を語れることを楽しみにしていると結びました。
次に弁護士の方々による寸劇「悪玉三者会談」では、某会社の密室で行われた職員解雇へ向けての話し合いを本物のビールを飲みながら絶妙の間合いで演じられ、CCU(キャビンクルーユニオン)を「キャンキャンうるさい」「ちょろちょろうるさい」、御用組合を「岡っ引き」(御用だ御用だ)と表現するなど会場の笑いを誘っていました。そして、むぎもり会長は「会社とは宗教みたいなもの、むぎもり教の信者になればいいのだよ。儲かる会社、儲かるという漢字をよく見ると信者だろう」といった落ちで幕となりました。
職場からの訴えでは弁護士の梅田章二さんを進行役に、全日空乗員組合からはJALの経営破たんについて全日空では、航空会社は簡単につぶれるといった危機感があり、累損を一掃し強靭な体力で市場に戻ってくるJALや、外国航空会社、LCCと呼ばれる格安航空会社との競争に負ければ市場からの退場を余儀なくされるため、生産構造の改革と称して乗員の乗務時間を延ばし、今いる人間で利益を上げようと、とにかく我慢といった風潮が広がっているとの報告がありました。
客室乗務員からは、現在のJALはもの言えぬ職場になり、チームワークで仕事ができず、チーフパーサーが立ったまま着陸したり、ドアモードの変更を忘れたり、お湯、コーヒーの乗ったカートが客室に飛び出すといった事象が多数起きており、アンケートを取ったところ事案を報告せずもみ消しもあるとの指摘がありました。
整備の安全問題では、最近信じられないミスがあり、貨物ドアを開けたまま出発しそうになったケース、離陸してからパイロットが脚を上げる作業をしても上がらず、原因が安全ピンの抜き忘れであったケースが紹介されるとともに賃金カットが続き、将来性見えないことから職場でのモラル低下があると訴えました。
貨物や手荷物の運搬、掃除を受け持つグランドハンドリングの職場では、27歳で手取り15万円、40代20万円ほどの賃金で毎日の生活が苦しく、今までためてきた貯金の取り崩し、車などを売って生活している実態や、職場での教育不足で4月以降53件のイレギュラー、人身事故があったとの生々しい現場の報告がありました。
不当解雇撤回裁判原告からは、裁判闘争のスケジュール報告ともに署名、物品販売、支える会の申し込みのお願いがあり、最後に航空連大阪地連議長の加藤常雄さんから、JALの破たんと再建に大きな問題点があったとの認識を示すとともに、経営はコスト削減に汲々としており、安全軽視の姿勢を許すことはできない。おかしいと思う感覚を持ち続け、声を出して経営に対抗する必要があるとのあいさつで閉会しました。
2時間の予定を大幅に延長するシンポジウムとなりましたが、報道では伝わらないJALの安全に対する危うさを現場の生の声から感じることができ、この会社を真に再建するためには、経験がありものを言う職員を職場復帰させることが非常に重要だということを、改めて認識したシンポジウムとなりました。