1 政府は、2022年12月16日、「 国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の安保3文書を改定し、敵基地攻撃能力を保有すること、および今後5 年間の軍事費を現在の1.5倍 以上となる43兆5000億円とすることを閣議決定した 。
しかし、安保3文書の改定は、憲法9条を骨抜きにする実質的な改憲であるとともに 、市民の暮らしの破壊につながる ものである。
2 敵基地攻撃能力の保有は、周辺国に対して攻撃的な脅威を与えるものであ り、憲法9条および国際法に反する先制攻撃となりかねない危険がある。また、日本が他国から攻撃を受ける危険が逆に高まりかねない。
歴代政権は、一貫して、平和憲法の下、周辺国に脅威を与える兵器は保有できないとの立場を堅持しており、従来の政府方針を覆し、立憲主義の破壊でしかない。
しかも、集団的自衛権行使を容認する安保法制の下では、アメリカに対する武力攻撃があった時点で日本に対する武力攻撃がなくとも日本が相手国に攻撃する可能性すらあり、重大な危険を孕んでいる。安保3文書改定後の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表でも、敵基地攻撃能力についてアメリカとの緊密な連携の下で効果的な運用に向けて協力を深化させるとされ、従前からアメリカが推進してきた統合防空ミサイル防衛の構築に言及されるなど、アメリカの軍事体制の中に自衛隊が組み込まれ、アメリカの戦争に利用される危険性がより高まっている。
3 政府は、増額した軍事費の財源に充てるために法人税、所得税などの増税、国債の発行を予定しており、さらに国有財産の売却まで定める「防衛力強化資金」創設法案を閣議決定した。他方で、介護保険や後期高齢者医療制度の改悪など社会保障の削減を進めている。 このような増税や国債発行、社会保障の削減をしてまで行う軍事費の大幅な増額は、まさに戦前の日本と同じく軍事大国への道に進むものであり、市民の暮らしを破壊るものである。
コロナ禍は未だ収束せず、さらには大幅な物価高騰により、多くの世帯の生活が圧迫されている現状において、市民の命と暮らしを守るためには、消費税の廃止減税や社会保障給付の拡充、最低賃金の大幅な引上げによる賃上げの促進などが不可欠である。
4 民主法律協会は、憲法9条を骨抜きにし、暮らしの破壊につながる敵基地攻撃能力の保有及び軍事費の大幅な増額を定める安保3文書改定の閣議決定に断固反対し撤回を求める。そして、憲法を生かし真に市民の命と暮らしを守る政治の実現のため、引き続き奮闘する 。
2023年2月18日
民主法律協会2023年権利討論集