弁護士 清 水 亮 宏
1 2022年9月の判例ゼミ
2022年9月6日18時30分から、民法協事務所とZoomの併用でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。若手弁護士や労働組合の方に多数ご参加いただきました。
今回のテーマは「労働組合法上の労働者性」です。近年、フリーランス(あるいは名ばかり事業主)自身が労働組合を結成し、使用者との団体交渉によって問題の改善を図るという取り組みが広がり始めています。(ヤマハ英語講師ユニオンやECCジュニアホームティーチャーユニオンなど、民法協と関わりのある労働組合もあります。)
ところが、使用者側から、労組法上の労働者に当たらないとの理由で、団体交渉の申入れが拒否されるケースが目立ちます。そのため、労組法上の労働者性を主張する際のポイントを裁判例の検討を通じて学びました。
2 検討した判例・裁判例
まず、新国立劇場運営財団事件(最三小判平成23年4月12日民集65巻3号943頁)について、私・清水から報告しました。この判例は、労組法上の労働者性について、判断要素を具体的に示しつつ、新国立劇場合唱団のメンバーの労働者性を認めた最高裁判例であり、この論点のリーディングケースです。最高裁が示した判断要素、合唱団メンバーの働き方、日本音楽家ユニオンの闘い(嬉しいことにユニオンの方にご参加いただき、コメントをいただくことができました。)等について議論しました。
続いて、中労委NHK全受労南大阪(旧堺)支部事件(東京高判平成30年1月25日 労判1190号54頁)について、西田陽子弁護士からご報告いただきました。この高裁裁判例は、NHKの料金集金等を行う地域スタッフについて、労組法上の労働者性を肯定したケースです。最高裁が示した判断要素について、具体的に検討・議論しました。拘束性・指揮監督関係の有無や程度をはじめ、各要素について詳細な事実認定と検討が行われているため、主張のポイントを整理することができました。
最後に、フランチャイズ加盟店の労組法上の労働者性を否定したセブンイレブン事件(東京地判令和4年6月6日 ジュリ1575号4頁)について、加苅匠弁護士からご報告いただきました。フランチャイズ加盟店の労働者性については、関心を集めているものの、事例自体は多くありません(他の事例として、公文(くもん)の教室指導者の労働者性を肯定した東京都労働委員会命令R1・5・28)。労働者性を否定した東京地裁判決の問題点や課題(顕著な事業者性の判断要素の位置付け等)について、参加者間で議論しました。
3 さいごに
次回の判例ゼミは2022年10月17日(月)18時30分~@民法協事務所+Zoomです。テーマは「事業場外みなし労働時間制」です。ぜひご参加ください!