お知らせ

大阪地裁への申入れ

2022年6月23日

大阪地方裁判所 所長 宮崎英一 殿
大阪地方裁判所第5民事部(労働部) 部総括裁判官 横田昌紀 殿

民主法律協会
会長 萬井 隆令

大阪労働者弁護団
代表幹事 森 博行

申入れ書

第1 申入れの趣旨

 弁論準備手続において,労働組合関係者の傍聴を許可する扱いとされたい。
 労働審判手続において,審判員へ書証を交付する扱いとされたい。
 口頭弁論終結において,必ず判決期日を指定されたい。

第2 申入れの理由

1 「1」について

(1)はじめに
弁論準備期日において当事者が傍聴を申し出た者については,手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き,その傍聴を許さなければならない(民訴法169条2項ただし書き)とされている。つまり,当事者が傍聴を申し出たものについては,原則として傍聴を認めなければならない。
しかし,御庁第5民事部においては,どの裁判官が裁判を担当・受命されたとしても,労働者側関係者の傍聴の申出については,「支障を生ずるおそれ」があるかどうかの検討をすることなく一律に不許可とされている。他方で,使用者側は当事者以外の傍聴が,民訴法169条2項ただし書きに基づいてであれそうでない形であれ,安易に認められている。こうした取扱いは,次の点から問題である。

(2)生じうる問題点
なにより,民事訴訟法の規定に反するということである。上述の通り,法は,当事者が申し出た者の傍聴は原則として許されなければならない。それにも関わらず,実際には原則禁止という運用がなされているため,原則と例外が逆転してしまっている。また,「支障を生ずるおそれ」を具体的に検討していない点も明文に反する。
次に,労働者からの傍聴申出は認めないにもかかわらず,使用者からの傍聴は認める点において,平等,公正な取り扱いに反する。ひいては,国民の裁判所(官)に対する信頼を失わせ,司法制度に対する信頼をも失わせることになる。
さらに,第5民事部全体で一律に労働者側の傍聴申出を認めないという運用は,裁判官の職権行使の独立をも害するものである(憲法78条3項)。その結果,司法制度の公正に対する信頼を失わせることになるのは上述の通りである。
こうした運用により,労働者側は,傍聴の機会を確保するために弁論準備期日に付されることを拒否し,口頭弁論による進行を求めることとなり,その結果,開廷日や法廷の空き状況により期日が入りにくくなったり,細かい議論がしにくくなったりして,訴訟が遅延するという弊害も生じることになる。

(3)小括
よって,労働事件において,労働者側が傍聴を求めた場合にも,「支障を生ずるおそれ」がない限りは,原則として許可を出すものとしている法の趣旨に適うよう傍聴の可否を判断する取り扱いに改めていただきたい。
なお,御庁第5民事部以外の民事部及び他庁の労働部においては,労働者側からの傍聴申出は例外事由がない限り認められている。

2 「2」について

(1)はじめに
労働審判手続は,原則3回の手続であって,第1回期日にできる限り審判委員会として事案の内容を把握するためには,審判員が申立書,答弁書だけでなく,書証を検討することが不可欠である。
また,充実した審理の点からも,当事者に対して充実した審尋ができるよう,審判官も事前に書証を検討すべきである。

(2)書証を交付しないことの問題点
ところが,御庁においては書証を審判員へ交付しておらず,このことは労働審判手続のよりよい運用を追求するにあたって相当ではなく,不適切といわざるを得ない。
ただ,御庁が書証を審判員へ交付しないのは,審判員の負担を考慮してのこととも考えられる。
しかし,審判員は労働関係に関する専門的な知識経験を有する者であって,書証の交付を受けたからといって負担となる事態は考え難い。むしろ労働現場の豊富な経験を有する審判員が審判官とともに迅速に事実関係を把握し事案の解決に向けて検討を行うために,書証を手元に置いて検討することは必要不可欠である。
また,書証交付にあたっては,そもそも当事者において審判員用の書証を御庁へ交付しない場合もあるかもしれない。
しかし,当事者へ審判用の書証提出を義務付けるのではなく,提出があればこれを審判員へ交付するという扱いにすれば足りる。
また,書証交付によって個人情報の流出を懸念するかもしれない。
しかし,審判が終われば書証を回収するという方法によって,かかる懸念は解消できる。

(3)小括
よって,御庁においては,審判員に対して,書証を交付する取り扱いをされたい。

3 「3」について

(1)はじめに
民事訴訟法251条1項は,「判決の言渡しは,口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。ただし,事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは,この限りでない。」と定めている。ところが,御庁では,口頭弁論終結時に判決言い渡し期日が指定されず,追って指定とされるケースがこれまでにあった。

(2)判決を追って指定とすることの問題点
当事者間での話し合いを待ってそれが不調となった場合に判決をするということもあり,そのような場合には,判決を追って指定という扱いをすることは,当事者間の円満解決を図るべく,相当なものである。
しかし,御庁では,すでに和解協議が決裂している場合や,行政事件の取消訴訟で和解ができない事件であっても,口頭弁論の終結時に判決期日が指定されずに追って指定とされることがあった。しかも,このような場合に,追って指定とする理由の説明もなく,いつ判決言い渡し期日が指定されるのかについて問い合わせをしても,回答がなかった。
こうした判決言い渡し期日の追って指定は,民訴法251条1項ただし書きの「特別の事情」とは言い難い。
また,判決言い渡し期日が追って指定とされれば,当事者,代理人は,いつ判決が言い渡されるのか分からないという不安定な状況に置かれる。判決が追って指定とされることで,当事者の迅速な裁判を受ける権利(民事訴訟法2条)も害される。

(3)小括
よって,裁判所が和解を勧試する場合など,真に特別の事情がある場合を除き,口頭弁論終結時に判決期日を指定されたい。

以 上

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