「シフト制労働ホットライン」
シフト制労働対策弁護団(東京)と民主法律協会(大阪)が共同で開催します。
開催日時:
2022年4月16日(土)11時~18時
相談電話番号:
03-5395-5359(東京)
06-6361-8624(大阪)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、シフト制で働くパートアルバイト労働者のシフトがゼロになったり大幅にカットされ、大幅な収入減が多く発生しています。シフト労働制の問題はコロナ禍で浮き彫りになった非正規労働の新たな課題であるとして社会問題化しており、多くの相談が寄せられています。
シフト制労働問題の解決に取り組んでいくため「シフト制労働対策弁護団」が結成され、東京でホットラインを開催します。大阪でも民主法律協会がホットラインを開催します。
当日は、労働者の立場にたって労働問題に取り組んでいる弁護士がご相談に応じます。
お気軽にお電話ください。
シフト制に関する労働問題Q&Aは、以下をご覧ください。
PDFファイルはこちら→シフト制労働問題Q&A
【シフトカットと賃金】
Q:新型コロナウイルスの影響で、シフトが減り、給料が大幅に減ってしまいました。減少した給料を支払ってもらえないのでしょうか。
A:減少した給料が支払われるかどうかについてですが、(1)すでに決まっていたシフトを減らされた場合と、(2)まだシフトが決まっていなかった期間について従前よりもシフトが減らされた場合に分けて考える必要があります。
(1) すでに決まっていたシフトを減らされた場合
すでにシフトが確定していた減らされた場合には、賃金あるいは休業手当を請求することができる場合が多いでしょう。
法律では、シフトの減少について、
① 会社に故意や過失などがあれば、100%の賃金を請求することができます。
② 会社に故意、過失がなくても、不可抗力でなければ、60%以上の休業手当を請求することができます。
民法536条2項は、「債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と定めています。すなわち、会社の責任によって仕事ができなくなったときは、労働者は会社に給料全額を請求することができるのです。
また、労働基準法26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定めています。民法536条2項と同じ「責に帰すべき事由」という言葉が使われていますが、労働基準法は労働者保護を目的とする法律であることから、民法536条2項の解釈よりも広く解釈されており、不可抗力の場合を除き広く該当します。すなわち、不可抗力の場合を除き、会社側に事情により仕事ができなくなったときは、会社は労働者に60%以上の休業手当を支払わなければならないのです。
たとえば、会社が新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、自主的な判断で営業時間を短くしたことによってシフトがカットされた場合、営業時間が短くなっても労働者の勤務時間や日数を減らす必要がなかった場合、シフトカットせずに他の業務を命じることができた場合などには、減らされた分について、会社に対して100%の賃金請求あるいは60%以上の休業手当を請求できる可能性があるでしょう。(2) まだシフトが決まっていなかった期間について従前よりもシフトが減らされた場合
まだシフトが確定していない場合でも、労働契約書に週●日・週●時間など就労日数や時間が明記されている場合や、労働契約書に明記されていなくてもこれまでの勤務実績から使用者の説明などから毎月のシフト日数が一定決まっていたといえる場合には、(1)と同様に、シフトカットの原因や理由によっては減らされた分について、100%の賃金請求あるいは休業手当を請求することができます。
【シフトカットと休業支援金】
Q:新型コロナウイルスの影響でシフトカットされたのですが、会社から賃金、休業手当が支払われていません。休業支援金を申請することができますか。
A:新型コロナウイルスの影響でシフトカットされたにもかかわらず、会社から賃金、休業手当が支払われてなければ、休業支援金を申請することができます。
新型コロナウイルスの影響によりシフトカットをさせられた労働者で、雇用主から休業手当の支払いを受けることができなかった場合、国が支給する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「休業支援金」)を申請することができる場合があります。
休業支援金の手続については、厚生労働省のサイトに支給要件や申請方法の記載があります。https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html
会社が支給要件確認書を出してくれないなど休業支援金の手続に協力してくれない場合でも、労働契約書や給与明細からシフトカット・休業が分かれば、会社の協力がなくても、休業支援金を申請することができます。
【シフトの明示】
Q:会社から始業終業時刻や休日などを具体的に知らせてもらえていないのですが、問題はありませんか。
A:会社が始業就業時刻や休日などをあらかじめ具体的に知らせないことは、法律上問題があります。
労働基準法においては、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して「始業終業時刻」や「休日」に関する事項などを書面(ただし、労働者が希望した場合には、メールの送信等電子的な方法によることも可)で明示しなければならないこととされています(以下「労働条件明示義務」)。まずは、労働条件通知書、就業規則などの記載をご確認ください。
もし、「始業終業時刻」について、単に「シフトによる」などの記載しかなく始業及び終業時刻が不明で、かつ、契約締結時に一定期間分のシフト表の交付もなかったという場合は、労働条件明示義務を尽くしているとは考えられず、不適切です。
また、「休日」について、具体的な曜日等が定まっていない場合、あるいは、休日の設定にかかる基本的な考え方も明示されていない場合も、労働条件明示義務を尽くしているとは考えられません。労働基準法では、毎週少なくとも1回または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないこととされていますので、最低でもこうした内容を満たすような考え方を明示する必要があります。
始業終業時刻や休日などの労働条件があいまいというのはトラブルの元です。そのため、労働条件明示義務の違反には30万円以下の罰金という罰則が設けられています。また、厚生労働省は、使用者と労働者との間でシフトの通知期限や方法を定めておくことを推奨しています。
なお、労働条件通知書や就業規則などに「変形労働時間制」(一定の期間を単位として、週当たりの平均労働時間が週法定労働時間(40時間)を超えないことを条件に、所定労働時間が1週または1日の労働時間を超えることを許容する制度)と記載されていることもありますが、どの日に何時間働くかなど、労働時間の特定は、変形労働時間制を導入するために不可欠な要件となります。「始業終業時刻や休日などを具体的に知らせてもらえていない」ということであれば、変形労働時間制が無効である可能性、ひいては未払賃金が生じている可能性があります。
勤務シフトを明示せず、始業終業時刻や休日などを具体的に知らせないことは、労働条件明示義務との関係でも、また、(仮に導入されているならば)変形労働時間制との関係でも問題があります。
【シフト制と有給休暇】
Q:シフト制で働いているのですが、会社に有給休暇を申請したら、「シフトを調整して決めたのだから、認めない。」と言われました。有給休暇を取得できないのでしょうか。
A:シフト制労働者であっても、有給休暇を取得することができます。
シフト制労働者でも、雇用開始から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、労働基準法所定の日数の年次有給休暇が付与されます(労働基準法39条1項、2項)。また、所定労働日数が少ない労働者についても、労働日数に応じた日数分の有給休暇を与えなければなりません。有給を何日取得できるかは勤務年数や週の勤務日数によって異なりますので、以下の厚生労働省のHP等からご確認下さい。https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/roudousya.html
シフト制労働者の場合であっても、有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければなりません(労働基準法39条5項)。
そのため、仮に、シフトを調整して決めたとしても、会社は、有給休暇の取得を認めないという扱いはできません。