弁護士 城 塚 健 之
本書は、コロナ禍の「最前線」で勤務する保健師の置かれた実態を告発するとともに、そこから保健師等の増員を勝ち取る運動に打って出た小松委員長と大阪府職労の仲間たちの実践を明らかにしたものである。
これまで、保健師が日頃どんな仕事をされているのか分かっていなかった私も、本書を読んで、住民の様々な感染症、難病や、精神医療、母子保健などに取り組んでおられることがよく分かった(とりわけお仕事マンガは秀逸です)。本当に、公務員の仕事というものは、たいていは地味だけど、社会を下支えしてくれている、まさにエッセンシャルワーカーなのである。
しかし、自公から維新に至る新自由主義政治は、こうした担い手を減員し、さらにはバッシングで痛めつけてきた。そこにコロナ禍がどかんと覆い被さった。これでは保健所が崩壊しない方がおかしい。本書には、ツイッターで発信された現場の保健師の声が多数収録されている。「不誠実な(相対)評価で傷つき、…他の自治体に転職していった中堅職員が多くいたことで、保健師の層が薄くなってしまったことに改めて気づかされる。」、「職員をいっさい増やさずに「過労死ライン超えてる」と職員を呼び出して産業医面談やっても何の解決にもならない。」には、まさにそのとおり! 「大晦日も出勤…帰路についたのは新年を迎えてからに。」「元日も朝から出勤。…整理し終えたときには深夜3時を過ぎていました。」「(子育て中の)休日勤務もしている職員。親が知らぬ間に学校へ行ってなかったり…」、「口内炎が大量にできる、何をしているのかわからなくなる…」、「正直疲れました。家庭も犠牲にしてしまいました。」には、胸が痛くなる。ひたすらスタンドプレーに走る吉村知事のトップダウン方針がさらに現場を疲弊させる様子も。
このように身も心も追い込まれていては、「どうせ声を上げても…」という気持ちになりやすい。しかし、そんな中、小松委員長と大阪府職労の仲間たちは、「コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン」に学び、「大阪府の保健師、保健所職員増やしてキャンペーン」を開始する。そして、ネット署名は、目標の10万筆には届かなかったものの、短時日に6万筆を超える署名を集め、各保健所一人ずつの保健師増員を勝ち取ることができたのである。それは、取り組んだ一人一人に確かな自信を与えてくれる貴重な経験ともなった。
本書は、キーパーソンの取組み次第で、「仕方ない」から「あきらめない」にシフトチェンジし、成果を獲得できることを示す、運動づくりの教科書でもある。多くの運動体にとっても学ぶところがたくさんあるはずである。
日本機関紙出版センター
2021年7月刊
定価 1100円