民主法律時報

Q:政治活動を理由に減給?

Q 条例案では、政治活動を行った職員に対して減給すると定めていますが、地方公務員の政治活動はどのように規制されているのでしょうか。減給することは相当なのでしょうか。

A:地方公務員の政治活動について、地方公務員法36条は、政治活動として、「政党など政治的団体」の「結成への関与」、「役員となること」および「構成員になることの勧誘運動」(1項)、「投票勧誘運動」(2項1号)「署名運動の企画、主宰等の積極的関与」(2項2号)、「寄附金募集への関与」(2項3号)、「庁舎等の利用」(2項4号)を禁止しています。このように、地方公務員法は、一定の政治的行為を禁止していますが、罰則はありません。また、同じ地方公務員でも、現業職員・企業職員については、政治的行為は禁止されていません。
 そもそも、政治活動の自由は、市民が主権者として、政治的意思・思想を形成し、国の統治過程に参画するもので、議会制民主主義の根幹的基礎ともいうべきものであり、憲法21条により保障されています。そして、公務員にも、市民として、とりわけ公務を離れた私的な市民生活の場において政治的思想と意見を自由に表現し、活動する自由を保障しています。もっとも、公務員の政治的中立性及びそれに対する国民の信頼を確保するために、公務員の政治活動の自由は上記のような制約を受けています。
 しかし、公務員に政治的中立性が要請されるとしても、公務員の業務内容、権限等は多種多様であり、勤務時間外は一人の市民でもあるため、公務外の市民生活の場における私的な行動にまで政治的中立性を要請する必要はなく、勤務時間外に政治活動を行っても公務の政治的中立性を害することもありません。それにもかかわらず、政治活動を一律制限することは、憲法21条が保障する政治活動の自由を侵害するものであり許されません。
 東京高裁平成22年3月29日判決も、国家公務員が休日に政党機関紙等を配布した行為についではありますが、公務員という立場を離れ、職務とは全く無関係に、休日に、私人の立場で個人的に行われた行為については、行政の中立的運営及びそれに対する国民の信頼が損なわれる危険があるということは常識的に見て困難であると述べています。
 以上のとおり、内容の如何を問わず、職員が政治活動をしたことを理由に減給することは、憲法上問題があるといえます。

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