民主法律時報

Q:職務命令違反で分限免職?

Q:条例案では、5回目の職務命令違反又は同一の職務命令に対する3回目の違反があった職員は、ただちに分限免職とすると定めていますが、どのような問題があるでしょうか。

A:条例案には、校長による職務命令に違反した教員に対する処分として以下の規定が設けられています。
  ・1回目の違反=減給又は戒告
  ・2回目以降の違反=停職および氏名公表
  ・5回目の違反または同一の職務命令への3回目の違反=免職
 このように、職務命令の内容、態様も問わず、ただ違反回数のみに応じて処分内容が定められています。
 実際には職務命令の内容や違反状況が軽微な場合であっても、そのことは考慮されずに減給や停職などの重大な処分が実施されることになります。
 これは、処分の重罰化をもたらすとともに、校長の職務命令に絶対的な強制力をもたせて、校長による教育現場の支配統制を貫徹させようとするものです。
 職員会議で時間をかけて教師同士が議論をして、教師が自主性や創意工夫を発揮しながら学校運営をしていくのではなく、絶対的な命令権限をもつ校長による学校運営が基本とされているのです。
 なお、同一の職務命令に3回違反した場合は免職とされています。これは、橋下知事が「君が代を起立斉唱しない教師はクビにすべき」と表明していたのを実現するために盛り込まれたものです。「君が代」を起立斉唱しない教員を主たるターゲットとした規定といえます。
 侵略戦争を遂行する道具とされた「日の丸」と、歌詞の内容が国民主権と相容れない「君が代」に対しては、拒否感をもつ教員や児童生徒・保護者も少なくありません。
 これを強制する職務命令を拒否して「君が代」斉唱時に黙って着席していることは、形式的には職務命令違反となりますが、実質的には何ら卒業式等の儀式を妨害することになりません。
 こうした場合でも、1回の違反で直ちに減給又は戒告、2回目には停職、3回目には免職という重大な処分となります。自分の思想良心を貫くことで、学校から排除される教員の姿をみて、子どもたちはどう思うでしょうか。自分で考えて行動し、他人と違うことをすれば、酷い目にあるので、自分の意見を通さずみんなと同じことをしていればよいと思うでしょう。こうした子どもたちが、果たしてグローバル社会に対応できる人材といえるのか、大いに疑問があります。

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