決議・声明・意見書

決議

自衛隊の中東海域への派遣に抗議し撤回を求める決議

安倍内閣は、2019年12月27日、自衛官260名、護衛艦1隻とソマリア沖で海賊対処行動に従事している哨戒機P3C1機を中東アデン湾等に派遣する閣議決定を行った。
その後の2020年1月2日、米軍は、空爆によってイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した。米政府は、自衛行為であると主張するが、ソレイマニ司令官による差し迫った脅威は未だ示されておらず、かかる攻撃は国連憲章及び国際法に違反する疑いが強い。これに対し、イラン革命防衛隊は、同年1月8日、イラク国内の米軍駐留基地に、数十発のミサイルを発射した。米国がイラン核合意から一方的に離脱したことにより悪化した中東情勢は、報復の連鎖により、ますます軍事的緊張が高まっている。
その中で、河野防衛大臣は同月10日、海上自衛隊の護衛艦1隻と哨戒機2機の派遣命令を出し、同年2月2日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が自衛官約200名とともに、横須賀基地を出港した。

政府は、今回の自衛隊派遣の法的根拠を、自衛隊法の定めではなく、防衛省設置法4条1項18号の「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」に求め、同規定は自衛隊が引き続き艦艇、航空機等を用いた情報収集活動や警戒監視活動を行うことができることを法律上明らかにするものであると述べている。
しかしながら、自衛隊法は、憲法9条のもと、自衛隊の活動を規制するために、その任務・権限を限定的に定めたものである。政府の立場によれば、自衛隊が自衛隊法に基づかずに艦艇、航空機等を用いて情報収集活動や警戒監視活動を行うことができることになるが、政府が自衛隊法に基づかずに自衛隊の運用が行えるとすれば、その運用に歯止めがかからなくなる。今回の自衛隊の中東派遣も、国会閉会中の閣議決定のみで行われたものであり、国会で審議すらなされていない。
しかも、「調査及び研究」の派遣といえども、攻撃を受けたときはもとより、日本の船舶に対する襲撃があれば海上警備行動を発動して武器の使用を行うことが想定され、戦闘行為に発展するおそれもある。前記した現在の中東情勢からすればそのような事態に発展する可能性は高い。そして、襲撃を行っている相手が国や国に準ずる組織だった場合は、日本国憲法9条の禁ずる「武力の行使」に抵触することになる。
米国と同盟関係にあり、イランとも従前より良好な関係にある日本は、今こそ憲法9条の精神に基づき、平和的外交努力により、軍事的緊張の緩和を目指すべきであり、中東海域への自衛隊派遣は即刻撤回されるべきである。

民主法律協会は、自衛隊の中東海域への派遣に強く抗議し、その撤回を求める。

2020年2月15日
民主法律協会2020年権利討論集会

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