決議・声明・意見書

決議

例外なき労働時間規制を求める決議

働き方改革一括法の労働時間規制には様々な例外が存在し、長時間労働を是正することができない実態が存在する。

医師の労働時間規制は5年間適用を猶予され、医師の働き方改革検討会で議論されている。その議論では、地域医療を支える医師や研修医は年間1860時間、その他の勤務医は年間960時間の労働時間規制を設ける案が有力である。過労死ラインを大幅に超える労働時間規制では、過労死を多発させる。

同じく労働時間規制を猶予された自動車運転業務、建設事業でも、発注者を含めた労働時間短縮の取組が進められており、この流れを確実にする必要がある。

公立学校の教員について「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」という。)により、生徒の実習、学校行事、教職員会議、非常災害の限定4項目以外の業務に関して、文科省は「労働」ではなく「自発的」業務と評価している。2019年1月25日の中央教育審議会の答申は、このような給特法の誤った運用が教員の長時間労働を増悪させる要因であるという認識が欠ける不十分なものであった。公立学校の教員は、「労働」を「自発的」業務と評価されることにより、長時間労働に歯止めがかからない状況となっている。

さらに、政府は、柔軟な働き方として副業・兼業を推進している。労働基準法38条1項により事業場が異なる場合には異なる事業場ごとに労働時間を通算することが規定されている。しかし、厚労省の政策審議会では副業先の労働時間の把握が困難であるとの使用者側の声に呼応して、労基法38条1項の見直しの動きも見られる。事業場ごとに通算しない運用になると、労働時間規制は空文化し、違法な長時間労働を合法化してしまう危険性がある。

加えて、政府は裁量労働制等に関するアンケート調査を実施し、裁量労働制の拡大を画策している。しかし、2018年度過労死等の労災補償状況によると、裁量労働制労働者の脳・心臓疾患や精神疾患の発症や過労死の数は減少していない。このような中で、裁量労働制を拡大する動きは、労働者の生命や健康を軽視するものである。

当会は、以上のような労働時間規制の趣旨を没却するような動きには断固として反対し、これらの労働時間規制の例外をなくし、長時間労働の是正に向けて、取り組みを強めていく。

2019年8月31日
民主法律協会第64回定期総会

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