弁護士 冨田 真平
1 大阪市による、大阪市労組の組合事務所の供与についての団交申し入れに対する団交拒否について、2019年1月2 8日、大阪府労働委員会は、大阪市に対し団体交渉に応じるよう命じる救済命令を出した。
2 大阪市労組の組合事務所の問題については、労働委員会での闘いでは、地労委命令(2012年2月20日)・中労委命令(2015年10月21日)において、大阪市の不当労働行為が断罪されたが、裁判での闘いにおいては不当な高裁判決・最高裁決定(2017年2月1日)が出され、大阪市労組は、2017年3月、断腸の思いでこれまで守り抜いてきた本庁舎の組合事務所を明け渡した。
他方で、大阪市労組は、裁判・労働委員会での闘争と並行して、大阪市に対し、2012年度使用不許可処分時以降、毎年のように、使用許可申請や同不許可処分の前後に、組合事務所の使用その他を交渉議題とする団体交渉を開催するよう申し入れてきた。しかし、大阪市は、管理運営事項(地公法55条3項)や労使関係条例を口実として、一貫して団体交渉に応じない態度をとってきた。
事務所明け渡し後の2017年3月に行った、①組合事務所の供与について真摯な協議を行うこと、②組合事務所を供与しない具体的理由の説明、組合の不利益の回避、代替措置の存否・条件や検討状況、退去を巡る条件について具体的な説明、協議を行うこと、③市庁舎その他大阪市が所有・管理する全ての物件について使用状況を具体的に説明し、供与可能なスペースの有無について協議を行うことなどを団交事項とした大阪市労組の団交申入れに対しても、大阪市は2か月以上放置した上で、結論として団体交渉を開催しなかった。
そこで、2017年9月11日に大阪市の団交拒否に対し、団交応諾命令とポストノーティスを求め、府労委に救済の申立を行うに至った。
3 府労委命令では、ほぼ組合側の主張を認め、上記①~③の交渉事項について団体交渉を開催しなかった大阪市の態度が正当な理由の無い団体交渉の拒否であると判断した。
市側は、府労委において、地公労法が適用される公務員で構成される労働組合については、組合事務所などの団体的労使関係に関する事項は義務的団交事項にあたらない(地公労法第7条各号及び第13条2項に列挙された事項以外の事項については義務的団交事項とはならない)という主張を行った。これに対し、府労委命令は、市側の主張を退け、地公労法第7条本文はそこに規定されていない事項について団交の対象から排除する趣旨ではないとして、地公労法が適用される労働組合についても、一般の労働組合と同様に団体的労使関係に関する事項も義務的団交事項に当たるという至極全うな判断をした。
また、府労委命令は、本件の交渉事項が管理運営事項に当たるため、団交拒否に正当な理由があるという市側の主張について、団体的労使関係の運営に関する事項についても、管理運営事項そのものでない限り、原則として義務的団交事項となるとした上で、本件の交渉事項について、管理運営事項そのものではない事項が含まれているとして、管理運営事項であることを理由に団体交渉を拒否した大阪市の態度が不当だと判断した。
さらに府労委命令は、交渉事項②③について、管理運営事項に該当する事項があるかどうか明らかでなかった(なお、これらの事項が管理運営事項そのものでないことは泉佐野市不当労働行為事件の中労委命令などからも明らかである)ため、確認したい旨伝えただけであり、団体交渉を拒否していないとの市側の主張についても、管理運営事項に該当しない事項がある以上まず団交に応じるべきであり、また不明な点があるのであれば、市側から組合側に積極的に交渉事項を確認すべきだったとして、市側の主張を退けた。
4 今回の府労委命令は、管理運営事項や労使関係条例を盾に一切団体交渉にさえも応じない不当な大阪市の態度をしっかりと断罪するものである。また、管理運営事項そのものでない事項がある以上まず団交に応じるべきであり、管理運営事項そのものでないものが含まれるかどうかについて市側が積極的に確認すべきとした点で、大阪市労連の事件の中労委命令をさらに一歩前進させたものといえる。
大阪市は、中労委で勝ち目はないと見たのか、大阪地裁に取消訴訟を起こそうとしており、橋下市政以降続く大阪市との闘いは、再び大阪地裁に闘いの場所を移すことになると思われる。今後も労働組合が自由な活動を展開できる正常な労使関係を取り戻すため、一丸となって闘っていく所存であるので、ご支援をお願いする次第である。
(弁護団員は、豊川義明弁護士、城塚健之弁護士、谷真介弁護士、及び冨田の4名。)