2018年12月8日,外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が成立した。
同改正法の主な柱は,特定技能1号と特定技能2号という2つの新たな在留資格を規定したことである。
特定技能1号は,特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格である。
特定技能2号は,特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格である。
我が国では,専門的知識や技術を有しないとされるいわゆる「単純労働」分野における外国人労働者の就労を認めない方針がとられてきた。しかし,同改正法はこのような労働者の受け入れを新たに正面から認めるとともに,従来の政策を大きく転換するものである。受け入れの対象となるのは介護,建設,宿泊,農業,漁業など14業種であり,5年間で最大34万5000人の受け入れが見込まれる。
外国人技能実習生に関する情報の提供や議論が不十分な状況で改正法の成立を強行しため,具体的な制度の内容は政省令に委ねられた。政省令が公表されるのは本年4月1日の施行日の直前である本年3月頃となる見通しであり,課題が山積した中での施行に不安や困惑の声があがっている。
そもそも,現行の外国人技能実習生制度において,長時間労働・低賃金,悪質ブローカーによる中間搾取,賃金未払い,最賃以下の賃金,労働災害の多発など,劣悪な環境が問題視されてきた。これらの劣悪な環境を顧みることのないまま,安易に外国人労働者の受け入れを拡大すれば,労働条件のさらなる悪化を招きかねない。
当会は,十分な議論なく改正法を成立させたことに対し,強い非難を表明するとともに,外国人労働者の増加が見込まれることを踏まえ,外国人労働者の相談体制の構築や情報の共有などの外国人労働者の組織化に向けた取組みを強化し,外国人労働者も我が国の労働者と同様の人間らしい働き方や暮らし方ができるよう,人権侵害根絶のための啓発や政策提言などに取り組む所存である。
2019年2月16日
民主法律協会2019年権利討論集会