弁護士 安原 邦博
2018年4月6~8日にシカゴで開催されたレイバーノーツの大会について、私からは、運動の方法論(レシピ)として人の話を聞く重要性が強調されていたことをご紹介したい。
レイバーノーツの大会では、何度も次の言葉を聞いた:「Union democracy」(組合民主主義)、「Rank and File Unionism」(一部(執行部)ではなく組合員全体による民主的な組合運動)。そして、複数のワークショップで、「Listening: For a Change」(変革のため、人を動かすための、「聞く」)という方法論が強調されていた。内容は次のとおりである。
・People like being listened to(人は、話を聞いてもらうことを好む(他の人の話を聞かされることよりも))
・ People like sharing their opinions and thinking(人は、自分の意見や考えを聞いてもらうことを好む(他の人の意見や考えを聞かされることよりも))
・Meetings go better when there is a chance for everyone to speak(ミーティングは、参加者全員が発言できるものの方がうまくいく)
・ If you want people to really consider a new idea, give them the chance to! People need opportunities to think out loud using their own words and examples(人に何か新しいことについて検討して欲しいのなら、そうしてもらえるようにする!人は、自分自身の言葉や事例を使って考えるものである(物事に対する理解の度合いは、聞くだけ ・When everyone gets to talk and be listened to, the union is stronger and more democratic(全員が発言をできるとき(全員の意見や考えを聞くとき)、組合はより強くなり、民主的になる)
・Easier to listen people into change than talking them into it(変革のため、人を動かすためには、自分の話を押しつけるよりも、相手の話を聞く方が容易である)
このレイバーノーツが発行する「Secrets of a Successful Organizer」の訳本であり、日本労働弁護団が発行している「職場を変える秘密のレシピ47」では、その巻末あたり(260~263頁)で、「基本に立ち返ろう」と題し、組織化において念頭におくべき点として次のことを挙げている:一対一で話す、自信を醸成する、権力に対して立ち上がる、有能なリーダーを獲得する、共通する問題を見つけ要求を共有する、民主的に組織する、具体的な目標を立てる、人に行動させる、団結する、近道はない、だんだんに運動の熱を高めていく、行動しながら評価する、組織がすべて、目標を見失わない。
レイバーノーツは、社会変革をする、人を動かすという運動において人の話を聞くのが重要であると、ごく当たり前のことを改めて強調する(たしかに、人の話を聞かなければ、共通する問題(要求)の共有も、団結も、何もできない)。これは、私たち活動家が、ともすればこの基本中の基本を忘れているか、またはうまく実践できていない、ということであろう。
来年(2019年)春に、レイバーノーツ・アジア大会を日本で開催することが計画中である。また、2020年は次回のレイバーノーツ大会(米国)である。運動の方法論(レシピ)を各国の活動家と学びあう絶好の機会となるので、今度は、是非、民法協で参加団を作ることができればと思う。
【書籍紹介】
『職場を変える秘密のレシピ 』 http://roudou-bengodan.org/secrets/
★民法協で少しお安くお求めいただけます。