民主法律時報

新人学習会 「労働相談入門講座」を受けて

弁護士 加苅 匠

1 新人学習会「労働相談入門講座」
2018年1月31日に、大阪弁護士会で新人弁護士を対象に、労働相談入門講座と題した新人学習会が開かれました。須井康雄事務局長が講師をしてくださり、新人弁護士7名が参加しました。
新人学習会では、弁護士が労働者の方から法律相談を受けた際に注意すべき点、事情を聴きとる際のポイントなどを、須井先生の実体験を踏まえながら、労働問題について具体的網羅的に解説していただきました。

2 事実の聞き取りの重要性
一口に労働相談といっても、多種多様な労働問題についての相談が考えられます。法律関係が複雑・不明瞭なケース、契約書等の資料がないケース、労働者の生活がかかっているケース…。どのような労働相談でも一番大切となるのが事実の聞き取りです。
当事者の把握として、勤め先の支店名はもちろんのこと、所属する部や課、室、そして具体的な指揮命令の流れを聞きだし、組織図、関係図を明らかにすることが、労働者が抱える問題を適切に把握するためには不可欠です。
また評価との峻別も重要です。事実と労働者が事実であると勘違いしたこと・思い込んでいることとは全くの別物で慎重な判断が要求されます。会社から解雇されたとの相談があっても、実際は上司との口論の中で「辞めてやる!」と言っていたケースもあるとのことです。重要な発言や場面は、労働者に実際に演じてもらい、実態を把握することが重要であることを学びました。

3 2018年問題!
学習会の中では、今年4月から適用される有期雇用契約の無期転換権(労契法18条)をめぐる不当な雇止めや不更新条項の問題、今年 10月に3年を迎える期間制限違法派遣の直接雇用みなし制度をめぐる派遣切りなど、今まさにホットな問題についても解説して頂きました。非常に難しい問題を抱える分野であり、法律的な対策を考えていかなければならないこと、労働組合と協力した活動を広げていくことによる解決の模索が必要であることを学びました。

4 新人学習会で学んだことを活かして
労働事件は、事実関係が複雑なうえに証拠が少ない場合も多く、法律だけでなく業種ごとの通達や基準などソフトローにも気をつけなければならないなど事件の見通しを立てることが難しいことも多いです。そして、労働問題の解決手段も多岐にわたります。労働者の権利救済にとって何が最善であるのかを見極めるためにも、今回の労働相談入門講座を活かした法律相談をしていきたいと思います。

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