現在、与党が衆参両院で3分の2以上の議席を有し、憲法改正の発議の可能性が極めて高まっている。現在の憲法9条を維持しつつ、自衛隊の存在を憲法に明記する改正案が予想される。
しかし、憲法9条2項で戦力を保持しないと定めているのに、自衛隊を憲法9条に明記すれば、自衛隊がどんな内実を備えても、憲法が不保持を定めた「戦力」ではないという解釈がまかりとおることになる。憲法9条2項は国の交戦権も否認するが、明記される「自衛隊」が交戦権を行使しない保証もなくなる。
自衛隊が憲法に明記されると、自衛隊は憲法自体が認めた例外であることになり、憲法9条2項のコントロールの及ばない存在となって、憲法9条2項の死文化をもたらす。
2015年9月に強行採決され、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法は、平和主義を定めた憲法9条や憲法前文に明確に違反する。憲法9条を改正し自衛隊を明記することは、憲法違反の安全保障関連法を事後的に追認するばかりか、将来の改憲により、憲法9条そのものをなくす足がかりにもなりかねない。
そもそも、憲法9条は、過去の侵略戦争の反省から、武力による平和を否定した。
国家間の経済連携が進み、国境を越えた国民同士のコミュニケーション手段が発達した現代では、憲法9条が目指す「対話による平和」こそが国際社会の潮流である。
自衛隊の存在を憲法に明記することは、そのような国際社会の潮流に反して「武力による平和」を重視する時代錯誤の動きである。
発議が行われた場合、憲法改正の国民投票が行われる。国民に対する十分な説明と情報提供が不可欠である。
しかし、安全保障関連法や共謀罪法(テロ等準備罪法)の国会審議でも明らかになったように、現政権は国民に十分な説明も情報提供もしない。憲法改正も、説明や情報提供が全く不十分なまま、国民投票に付されるおそれがある。
国民投票手続を定めた国民投票法は、意見表明の広告宣伝を法105条に定める外は投票日当日まで許し、宣伝費用の上限規制もしない。豊富な資金力を持つ改憲勢力が有利となるなど、多くの重大な制度的欠陥がある。
国民投票法が公正さ、適正さを欠く以上、国民投票に持ち込むこと、すなわち、憲法改正の発議自体を阻止しなければならない。そのためには、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が提起した「安倍9条改憲NO!3000万人署名」の実現が極めて重要である。
民主法律協会も、この取組に賛同し、志を同じくする個人・団体と連携し、憲法改正の発議を阻止することを強く決意し、ここに宣言する。
2018年2月17日
民主法律協会2018年権利討論集会