民主法律時報

北河内権利討論集会の報告

弁護士 鶴見 泰之

 2017年12月10日、寝屋川市にて、第 回北河内権利討論集会が開催されました。民法協からは、須井、小林、愛須、長瀬、片山、鶴見の計6名の弁護士が参加しました。
午前中の全体会では、須井弁護士から、「改憲発議を許さない運動の先頭に立とう」というテーマでの講演が行われました。

昼食休憩を挟み、午後からは、①「各職場での要求実現への経験交流」、②「職場の悩み、権利侵害等交流会」、③「非正規から正規への無期転換 労契法 条の活用と課題」の3つの分科会が実施されました。私が担当した③の分科会では、30分程度で無期転換ルールの説明を行い、1時間30分を質疑応答や参加者同士の議論の時間に充てました。参加者から受けた質問を2つ紹介したいと思います。

1つ目の質問は、業務委託に関するものです。事例を交えて質問内容を紹介しますと、Y社から業務委託を受けたA社が、Y社の工場でA社が雇用する有期契約労働者Xらを指揮命令した上で3年間就労させていましたが、次期競争入札でY社の業務をA社が落札できずにB社が落札し、A社の労働者をB社が引き継ぐことになり、Xらは、B社との間で新たに有期労働契約を締結し、Xらは、これまで通りにY社の工場で新たに2年間継続して就労している(Xらは、通算、Y社の工場で5年間就労してきた)という事案において、「XらのY社での就労期間が5年を超えていれば、XらはB社に対して、無期転換の申込みができるのか?」と質問を受けました。

無期転換ルールとは、同一の使用者の下で、有期労働契約が反復更新され、契約期間が通算で5年を超えたときに、労働者の申込みにより、使用者は無期転換の申込みを承諾したものとみなし、有期労働契約が無期労働契約に転換される制度のことをいいます(労働契約法 条)。
Y社の工場で5年以上就労していたとしても、Xらの使用者がA社からB社に切り替わっていますので(同一の使用者ではありませんので)、この場合、無期転換ルールは適用されません。

2つ目の質問は、「派遣労働の場合、労働者と派遣先との間で無期労働契約が成立するのか?」というものです。

労働契約は、労働者と派遣元事業主との間で結ばれていますので、無期労働契約は派遣元事業主との間で成立し、派遣先とは契約は成立しません。

参加者からは、派遣先との間で、無期労働契約が成立しないと、雇用の安定にはつながらないのではないかとの感想が寄せられました。
これらの質問以外にも、無期転換された労働者に適用される労働条件が、就業規則などの「別段の定め」により、従前の労働条件よりも不利益な内容に変更される場合のことなどを議論しました。
今後も、無期転換ルールについての議論を深めていきたいと感じる分科会でした。

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