民主法律時報

「同一労働同一賃金ガイドライン案」学習会を開きました

弁護士 井上 耕史

2017年3月21日、エル・おおさかにて、中村和雄弁護士(均等待遇研究会責任者)を講師に迎えて、民法協学習会「真の均等待遇実現を目指して『同一労働同一賃金ガイドライン案』にどう対応するか」を開催しました。安倍「働き方改革」によるプロパガンダを垂れ流す報道が氾濫するなかで、このガイドライン案をどう評価し、どう労働運動・争議の現場で活用するのか、多くのことを学びました。

例えば、
・ 今回発表された「同一労働同一賃金ガイドライン案」は、「同一(価値)労働同一賃金」の解釈基準ではなく、現行労働契約法 条及びパート法8条の解釈基準に過ぎない。その内容も基本給、賞与、退職金については何も言っていないに等しい。他方、手当については基本的に平等にする方向性を示しており、今すぐ裁判や団体交渉でも活用できる面がある。

・ 「同一(価値)労働同一賃金」原則の下では、職務内容が同一または同等であることと格差の存在を労働者が主張立証すれば、使用者が格差の合理性を主張立証しなければならない。法制化は、不合理性の主張立証責任が労働者側に負わされている現状を転換させることになる。

・ 「同一(価値)労働同一賃金」の法制化に対する反応は業界によって違う。サービス業では既に格差が小さくなっており、「何を今さら」という反応。これに対し、製造業では、正規非正規の格差が大きく、使用者のみならず労働者の中にも反対がある。

・ 真の「同一(価値)労働同一賃金」を確立していくためには、教育費・社会保障費などこれまで正社員賃金に組み込まれていたものを国・自治体が負担する仕組みへ転換することとセットで取り組むことが必要である。

この学習会を受けて、民法協としてどう取り組んでいくかですが、まずは現状の格差改善にある程度役立つ面を活かして事件化と経験交流を進めたいところです。その上で現行法の限界と不備を明らかにし、まともな法改正への世論喚起につなげることが必要です。私見では、現行法ではそもそも格差そのもの(正規非正規の基本給の決定方法など)も開示されていない中で、困難な裁判を強いられている状況があり、改善するための使用者の説明責任の明確化は急務ではないかと考えています。また、教育費・社会保障費の負担問題とセットでの取組みについても問題提起を進めたいところです。

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