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大阪府財政構造改革プラン(素案)「公営(公的)住宅への行政の投資のあり方」に対する意見

民 主 法 律 協 会

 大阪府は、8月5日、「大阪府財政構造改革プラン(素案)」を発表し、その中で、「公営(公的)住宅への行政の投資のあり方」を検討している。しかし、その内容は、府営住宅の将来のストック戸数を半減することを柱として、セーフティーネットともいうべき公営(公的)住宅の供給という府の役割を放棄し、民間事業者の儲けの対象にするものであって、到底、容認できない。
 府は、府営住宅半減の理由として、人口減少社会を迎えて住宅ストックが過剰になることや、耐震性などの保有リスクがあること、府営住宅に入居できた人と入居できなかった人の受益の差が大きいことなどを指摘する。

 しかし、人口が減少するとしても同時に超高齢化が進むのであるから、比例的に住宅需要が減少することにはならないし、昨今の格差・絶対的貧困の拡大からすれば、供給の必要性はますます増えることが予想される。現に、府の資料でも、府営住宅の応募倍率は平均で8.85倍にも達しており、ストック戸数の削減をすべき状況にないことは明らかである。

 また、「受益の差」という議論は、国と協力して、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」こと地方公共団体に求める公営住宅法1条の目的に反する暴論というほかない。公営住宅に居住できずに民間賃貸住宅を利用することによって、市場家賃を負担せざるを得ない低額所得者がいるのであれば、これに対し、家賃補助等の措置を行うことによって、「受益の差」を解消すべきである。

 この点で、府が提唱しているバウチャー制度による公的家賃補助は、公営住宅による供給が不足する段階の過渡的な措置と位置づけるべきであって、将来的には、府営住宅の供給増こそが求められるべきである。ところが、府は、公営住宅の家賃を市場家賃として、従前家賃との差額は国による補助をすべきと提唱している。しかし、公営住宅法1条、16条に反するものである上、かえって市場家賃の引き上げ(便乗値上げ)を引き起こすおそれがある。このような公的家賃補助の制度設計には問題がある。

 また、府は、「効率的で安定した公営住宅経営」を図るために、「管理コストなどの見直しや一層の収入確保」を講じる必要があるとして、「指定管理者制度」による管理や、「民間事業者も活用した建替え実施により、地域特性を踏まえて高層化を行い、活用用地を創出、売却」することを検討している。しかし、これは、府営住宅を投げ売りして、民間デベロッパーの利潤追求の道具にするというものであり、住宅セーフティーネットを整備すべき地方公共団体の役割を放棄するに等しいものである。管理の民間委託や、住宅困窮者に対する住宅供給を民間事業者に委ねることは、住居という生活の基盤が市場原理に支配され、利潤を生み出すかどうかによって左右されることになり、居住の安定を著しく損なうものであって、これを認めるべきではない。

 さらに、府は、管理戸数未満の建替事業、低需要や耐震化が困難な住宅の用途廃止事業において、住宅の明渡しを求めるにあたり強制権を持って入居者を別の住宅に移転させる制度を導入するよう国に提言している。しかし、既存入居者の居住権保障を脅かすものであって、認めるべきではない。
 もともと、日本における公営住宅(借家)は6%と低く(欧州諸国は概ね20%前後)、公営住宅の整備が立ち遅れている。民間借家では、持ち家に比べて入居水準が低く、特に低額所得者は、昨今の「追い出し屋」被害に見られるように、家賃債務保証業者等による不当な取立てに脅かされるなど、住宅環境の劣悪さが社会問題となっている。こうした状況に鑑みれば、府は、良質で、低廉な家賃での府営住宅(借家)の供給を増やし、居住の安定に努めるべきなのである。

 私たちは、「公営(公的)住宅への行政投資のあり方」に示された府営住宅半減計画をはじめとして、経営の効率化のみをいたずらに追及した府の素案に反対し、その撤回を求めるものである。

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