弁護士 原野 早知子
2016年3月28日、大阪地裁第5民事部(労働部、通称「地民5部」)の判決・決定、訴訟指揮をテーマに、裁判・地労委委員会を開催した。地民5部の各裁判官について、弁護士・当事者・労組から見た問題点、逆に評価できる点を忌憚なく意見交換した。争議団・地域労組の関心が高く、参加者18名と盛況だった。
労働審判や和解(本訴・仮処分)については、強引に和解させようとする訴訟指揮が目立つ。当事者が戸惑っているのに「今日終わらなかったらどうなるか分かりませんよ」と迫る、代理人がいるのに当事者のみ部屋に入れて説得しようとする、代理人に連日電話を架け「本訴になれば悪影響があるので、本人と話させてほしい」と求める等である。中には、労働者の気持ちを逆なでするような聞き方をして、女性の当事者を泣かせたというものもあった。
評価できる訴訟指揮も報告されたが、全体に裁判官の訴訟指揮が省エネ(裁判所の労力を少なくして、事件を早く「落とす」ことを優先する)のように思われる。早期の解決が望ましい事案が多いことは確かだが、当事者である労働者が納得しない形で解決を押しつけることは許されないし、裁判所に対する信頼を低下させてしまう。確かに、地民5部は忙しそうであるが、マンパワーが不足しているなら、裁判所が手当すべきことであって、当事者に無理矢理和解を押しつけて事足るものではない。
また、労働組合の団体交渉について、裁判官が「団体交渉は労働審判法が求めている事前交渉ではない」と発言したり、「労働側も代理人弁護士が団体交渉に出席すべき」と発言した例が報告された。地民5部全体が「労働審判は、十分に事前交渉をしてから申し立てよ」との姿勢なので、前者はその延長にある発言なのであろうが、団体交渉が事前交渉となる場合は多々あるので、実質・実態を見ないものと言わざるをえない。後者の発言は、団体交渉の意味自体を理解しているのか疑念を抱かせるものである。こうした発言が頻発するようであれば、労働者側としての対応が必要となる可能性もあろう。
地民5部では1年前に裁判官7名のうち、内藤裁判長を含め4名が交代しており、判断内容は未知数の部分があるものの、この1年間に労働者側が敗訴した例がいくつかある。次回は、労働側敗訴例について、分析・検討を行うこととなった。(5月19日(木)18時30分~・民法協事務所で予定)
裁判・地労委委員会では、権利討論集会の分科会のみでは時間が足りないとの認識の下、年に数回例会的に委員会を開催し、議論を深めていく予定である。今回のような情報交換・意見交換は有意義であり、定期的に行っていく必要があるので、会員の皆さまには、積極的に参加・情報提供をしていただきたい。