民主法律時報

今、期待されること  <新年のご挨拶> 

会長 萬 井 隆 令

 降ってわいたように、政権を長引かせるためだけの選挙としか言いようのない衆議院選挙が年末に強行されました。安倍首相は「この道しかない」と叫んでいたそうですが、投票率は52%。国民の半数近くが「アベノミクス」に疑問を感じつつ、選挙にはそっぽを向いていたことになります。新聞は自民・公明圧勝ともてはやしますが、議席数は微減、得票率は30%程度であり、議席が300を超えたのは小選挙区制であったからこそ。むしろその「安定多数」は選挙制度が非・民主的であることの証左です。メディアがそれを批判しないことの方が非常識でしょう。
 ただ、この選挙で、存在意義が良く分からなかった「第3」が激減し、代わりに共産党が2年前の8から21議席へと躍進したこと、沖縄の4区とも自民党候補を破って「オール沖縄」候補が当選したことは、一筋の光明となるニュースでした。特に沖縄の選挙結果は、知事選の勝利とともに、以前はよく耳にした、「民主連合政府」というものの実現の筋道を示しているように思われます。

 始まってから20回目の、「今年の漢字」は「税」でした。消費税増税の一方で法人税は軽減するのですから、関心が高くなるのは当然の事です。日本にならってアジアで広まっているそうですが、中国は「法」、台湾は「黒」、シンガポールは「乱」、マレーシアは「航」だそうです(12月28日「毎日」)。誰が選ぶのか、どこも暗いイメージなのは、それらの国でも国民が政治に対する不満を蓄えていることを示しているからに違いありません。

 世の中には非常識なことが溢れています。残業したのに賃金が支払われないサービス残業は代表的な一つですが、名前も良くなく、労働者は「サービス」するつもりなどなく、使用者が働かせながらそれに見合う賃金を支払わないだけのことです。それが13年度には実に123億円。しかもそれは氷山の一部にすぎません。企業は労働者の権利に関わる法律を無視すれば、その分、稼ぎが増えるから、法律上も、解釈論でも、行政の見解もすべて一致してサービス残業は違法と分かっていても、労働者が自ら「不払いの分を支払え」といって立ち上がらない限り、使用者は支払わないのです。
 実は、残業手当の問題に限らず、労働者の権利はもともとそういう性格を免れません。「権利の上に眠る者は権利を失う」と言われるように、権利実現のための闘いがあって、それは初めて労働者が手にすることができることを、しかも、その闘いは決して誰かが代わってやってくれるわけではなく、労働者が自らやる以外にないことを、改めて銘記する必要があります。

 安倍首相がわけもなく張り切っているだけに、経済の面でも民主主義の面でも、今以上に暮らし難くならないように、政治本来の使命を悟らせる運動が求められています。稼働人口の9割近くを占める労働者の意思に叛くような政治は、労働者の闘いで止めることができないわけがありません。集団的自衛権、秘密保護法、TPP、沖縄の基地問題など、労働者が自らの生活と権利を守ることとあわせて、今こそ、闘うことが求められています。

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