民主法律時報

守口市非常勤職員(国保収納推進員)雇い止め事件

弁護士 愛 須 勝 也

1 守口市における国保収納推進員制度について

 守口市では1965年以降、国民健康保険料について、国民健康保険料収納推進員(当初は、徴収員)が戸別訪問による徴収業務を行ってきた。国保料が口座振替などへ切り替えられた結果、徴収業務の対象世帯は年々減少してきたとはいえ、収納推進員は、2013年度末で国保加入世帯の5%、約1000世帯の徴収業務を担当してきた。徴収実績は同年度で1億5000万円を超える。収納推進員は、守口市内全体で定員 名と定められていた。
 原告は、2006年6月に採用試験を受けて合格し、同年から1年更新の非常勤職員として「任用」された。その際、当局からは、「年齢制限は65歳とする」と明記された書面を示され、「1年更新だが、65歳までの雇用を保障する」という説明を受けた。 そして、採用後、就職説明会、研修を経て、1年ごとの更新を繰り返してきた。
 収納推進員が担当する世帯は、生活困窮で国保料の分納をしている世帯が多く、口座振替に切り替えが進む中でも独自の存在意義を有していた。
 市当局もその存在意義を認め、年2回定期的に行われる団体交渉のたびに、「収納推進員制度をなくすことはない」と言明してきた。
 また、市職労との年2回の労使合意においても、「65 歳定年制の恒常職種として制度を確立し、雇い止めはしない」ことを繰り返し確約し、交渉の確認事項として市職労に交付してきた。
 2010年12月、枚方・茨木における非常勤職員の給与条例主義に関する最高裁判決を受けて、守口市においても収納推進員制度を含む非常勤職員について条例・規則を制定した。その結果、学童保育指導員、パート保育士、消費生活相談員及び国保料収納推進員の恒常職種について、「労働時間なしの歩合給制」から、「週 時間の所定労働時間を設定した手当、成績給制」に移行した。

2 維新新市長の誕生と制度廃止

 ところが、2011年8月、維新の会・西端勝樹氏が市長に就任した。
 新市長は、戸別訪問による国保料の収納制度を廃止し、自主納付を促す旨の「改革ビジョン」を打ち出した(過剰サービス、不公平を理由)。
 これに対して、市職労は、12年10月から、収納推進員の雇用について団体交渉を行った。市職労は、従前の労使合意に基づき、収納推進員の雇用確保を要求したが、13年1月31日の第2回団体交渉において、当局は、収納制度廃止、収納推進員を14年3月31日をもって雇い止めすることを表明した。
 13年2月26日の第3回交渉においても、収納制度は同年3月31日で廃止し、原告については、今回1年限りは再任用するが、1年間は移行業務に見合った業務を担当してもらうとして、同年3月22日をもって団交を打ち切った。
 市職労は、その後も、再三、団交を申し入れたが当局は団交を拒否した。

3 雇い止め

 2013年4月1日の再任用に際して守口市は「その後の雇用の更新はいたしませんので、念のため申添えます」という「確認書」を一方的に交付している。原告は、同年4月から7月までは、守口市役所保健課において、市民に対し、口座振替等への切り替えを周知し、自主納付を促す業務に従事し、7月以降は、市の健康診断を勧誘する電話かけなどの業務を行ってきた(この間、給料はほとんど変動なし)。
 この間も、収納課自体はアルバイト職員を継続して雇用するなど原告が担当する業務は存在しているにもかかわらず、配置転換等の検討など解雇回避の努力を一切することなく2014年3月31日付で雇い止めを強行した。

4 更新に対する合理的期待

 原告は、採用にあたり、「1年更新だが65歳までの雇用を保障する」という文書を示され更新に対する合理的期待を有していた。実際にも7回(7年10ヶ月)の更新を繰り返してきた。また、05年、当局側から収納推進員(当時は、徴収員)に定年制を設けたいという申し入れがあった際、当時、最長27年の継続、最高齢は75歳を筆頭に65歳以上の者が6名雇用されている状況で、市職労は雇用継続を主張して当局と交渉した結果が、「年齢制限は65歳とする」という規定であった。原告が採用の際、示されたのは、その合意文書である。原告が、65歳まで雇用継続されると考えたのは当然である。

5 訴訟の状況

 原告は、地位確認と、雇用継続に対する期待権侵害の損害賠償を求めて、2014年6月17日、大阪地方裁判所に提訴し、すでに2回の口頭弁論が開かれた。公務職場の非常勤職員は、民間労働者以上に無権利状態に置かれているにもかかわらず、期限付任用の雇い止めについては公法私法二分論という形式的議論によって、一層、不安定な立場に置かれている。吹田市(福祉会館の障がい者を対象とするデイサービス事業)、東大阪市(学童保育指導員)とともに、非常勤職員のたたかいに連帯して勝利を勝ち取りたい。

(弁護団は、城塚健之、河村学、中西基、中峯将文と当職)

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