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決議

今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書に抗議する決議

 厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は、20日、労働者派遣制度の見直しについて報告書を提出した。報告書は、労働者派遣法の基礎的な考え方である「常用代替の防止」を再検討し、派遣の期間制限を個人単位とするなどの制度設計を提唱した。報告書を受けて、この秋にも労働政策審議会での更なる検討がなされ、来年の通常国会にも労働者派遣法の「改正」法案が提出されると伝えられる。

 しかし報告書は、派遣労働を一時的・臨時的なものに限り、直接雇用を原則として労働者の雇用の安定を図ろうとする現行の労働者派遣法の基本理念を放棄し、派遣先企業の都合で、不安定で劣悪な労働条件に甘んじることを余儀なくされる派遣労働者を恒常的に使うことができるように改悪するものであり、到底容認できない。

 まず、報告書は、登録型派遣や製造業への派遣の原則禁止を見送ったが、派遣の終了が雇用の終了に直結する登録型派遣や、「雇用の調整弁」として安易に打ち切られる製造業への派遣は、派遣労働者の雇用の不安定の元凶ともいうべきものであり、これらにメスを入れなかったのは、著しく不当である。

 期間制限についてはその在り方を業務単位から個人単位へ変更し、派遣元と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者には派遣期間制限を設けないこととするが、無期雇用派遣労働者だからといって雇用が安定しているということはなく、期間制限を設けない理由にはならない。有期契約の労働者については3年を期限としつつ、派遣先企業としては期限が経過するごとに派遣労働者を入れ替えて、派遣労働を利用し続けることができるとするが、それは派遣労働を一時的・臨時的なものに限定しようとする派遣法の趣旨を根本から否定するものである。

 また、派遣期間に制限のない現行の26業務の政令指定業務と自由化業務の区分について、判断が困難であること等を理由として、廃止を含めた見直しを要請する。しかし、政令指定業務の意義は何らあいまいではなく、行政当局としては、区分の見直し以前に、区分の困難さ等を口実としつつ付随的業務の名目で専門外の業務をさせようとする脱法行為を規制することこそが必要である。

 提案された、派遣期間の上限に達した派遣労働者への雇用安定措置は、派遣先の契約と就労が連動し、派遣元が派遣先企業に依存している実態を放置するものであり、有効性を欠くものといわざるを得ない。他方で、派遣先に関わる団体交渉応諾義務の整備を見送り、派遣労働者が労働組合を結成して団体交渉による解決を図ろうとすることを阻害し続けようとしている。さらに、均等処遇を導入しないとしたことも、派遣労働者を低い労働条件のまま使用したい企業側の思惑を優先したものであり、許されない。

 以上のとおり、報告書の提案する派遣制度の見直しは、派遣労働者保護に何ら役立たないどころか、派遣労働者を際限なく使い続けることを可能にするもので、労働者派遣法の理念を根底から変質させる危険性を含むものといわなければならない。私たちは、このような観点から報告書の提案に断固として抗議するものである。

2013年8月24日
民主法律協会第58回定期総会

 

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