民主法律時報

労働仮処分審理について意見交換会を開催

弁護士 西 川  大 史

1 はじめに

 5月2日、労働仮処分の審理についての意見交換会が行われ、連休の間にもかかわらず、ベテラン弁護士から若手弁護士まで十数名の弁護士に参加いただき、熱い議論が交わされました。


2 大阪地裁における労働仮処分の審理の実情について

 近時、大阪地裁では、労働組合の宣伝活動を制約する仮処分決定が数件出されています。
 そもそも、大阪地裁では、地位保全等の労働仮処分事件は、労働部である第5民事部に配点されますが、労働組合の街宣活動禁止仮処分事件等は、保全部である第1民事部に配点される運用となっています。また、大阪地裁では、従来、労働仮処分について、「大阪方式」(本訴並みに実質上証人尋問を行う口頭弁論的審尋方式)が採用されてきましたが、現在では、任意的口頭弁論が開かれることはなく、書面審理のみで判断されています。
 このような大阪地裁における労働仮処分事件の審理の実情が、不当な仮処分決定につながっているのではないかという危惧感から、この意見交換会が行われました。


3 議論・意見交換

 まず、北港観光バス事件や福住コンクリート事件などの街宣禁止仮処分事件(いずれも保全部に係属)や、中央交通事件(第23民事部に係属)や河内長野事業所事件(堺支部。最高裁の上告不受理により組合側の勝利が確定)などの組合活動を理由とする損害賠償請求事件について、当該の弁護団から詳細な報告がなされ、その後、組合の宣伝活動の内容や係属部、審理の問題点等について意見交換がなされました。
 具体的には、まず裁判官の資質の問題、すなわち、裁判官、特に労働部以外の裁判官は、労働事件に慣れておらず、まともな宣伝活動に接する機会も少ないため、我々が当たり前だと思っていることが裁判官にとって当たり前ではないことや、裁判官には、宣伝活動等禁止仮処分事件が、労働事件であるという感覚がないのではないかという問題点が指摘されました。
 また、従来は、仮処分事件でも実質的に証人尋問を行っており(いわゆる「大阪方式」)、それが組合側の勝因につながっていたが、現在では書面審理のみとなっていることに大きな問題があり、今後は、裁判所に慎重かつ適切な判断をさせるためにも、仮処分事件について合議体での審理の要求や、任意的口頭弁論により証人尋問を要求することも必要であることなどの問題提起もなされました。


4 今後の方針について

 この意見交換会を踏まえて、労働仮処分事件は、やはり労働者、労働組合の権利に直結することに鑑み、地位保全等のみならず、街宣活動禁止の仮処分等も含めたすべての労働仮処分事件が、第5民事部で審理されるよう裁判所に要求することが不可欠であるということを改めて確認することがされました。
 今後、民法協としては、慎重かつ適切な審理がなされるよう、労働事件に精通している労働専門部に係属されるよう申し入れをしたいと考えております。

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