決議・声明・意見書

声明

労働政策審議会建議「有期労働契約の在り方について」に対する声明

 2011年12月26日、労働政策審議会は、有期労働契約の在り方について厚生労働大臣に建議し、有期労働契約規制の方向性を示した。
 しかし、建議は、恒常的に仕事があるにもかかわらず、雇用調整の際の便宜と人件費節減目的のために有期契約労働が野放図に利用されている現状を、規制を通じて改め、雇用の安定と正規労働者との均等待遇を実現してほしいという有期契約労働者の願いに背を向けるだけでなく、現状の正規労働者と非正規労働者との格差を固定しかねない内容になっている。
 とりわけ、有期労働契約締結には合理的理由が必要であるといういわゆる入口規制について「例外業務の範囲をめぐる紛争多発への懸念や、雇用機会の減少の懸念」等の理由から措置を行わないとしたこと、これに伴って有期労働契約締結時に、契約締結理由を明示させる措置を講じないとしたことは、極めて問題である。
 そもそも、労働者は安定した雇用の下で働けなくては、権利擁護はままならない。その観点から労働契約は無期が原則でなければならない。入口規制で紛争が生じるのは、使用者側がかかる原則を無視して例外業務に該当するよう装い強引に有期労働契約を利用しようとするからである。また、低コストの労働者でなければ雇わないと自ら宣言して規制緩和を迫るのは身勝手の極みである。労働法制は、このような使用者の身勝手を許さないために存在するものであるにもかかわらず、有期労働契約締結に関して何らの規制も行わないのは、労働法制の理念に悖ると言わざるを得ない。
 また建議では、有期労働契約の反復・継続についてその上限を5年と定めた。平成23年有期労働契約に関する実態調査によれば、この規定で救済される労働者は4割にも満たず、保護としては不十分である。反復・継続期間は可及的に短いものにされなければならない。また、規制を骨抜きにしないためにも、期間を超過した場合は、労働者の申出により無期雇用に自動的に転換する仕組みでなければならない。
 使用者側が有期契約労働を利用する理由の1つはそのコストの低さにあり、有期契約労働規制の実効化には均等待遇の実現が欠かせない。建議は、労働条件について「職務の内容や配置の変更等を考慮」して不合理かどうかを判断するという。しかし、これは、職務の内容の同一性や人材活用の同一性等を要件として判断するパートタイム労働法8条が何ら機能しておらず、その要件を変更すべきであると「今後のパートタイム労働対策研究会」が報告書で指摘する内容さえ無視するものである。
 また、建議では、有期契約労働者の正規労働者への転換についてまったく触れられていない。有期契約労働者の強い願いである雇用の安定を無視するものである。
 さらに、建議によれば反復・継続を経て無期労働契約に転化しても、労働条件は非正規労働時と同一であり、正規労働者との格差は何ら是正されず、格差の固定化につながりかねない。
 我々は、使用者側の論理におもねり労働者保護の視点に欠けた今回の建議を強く批判するとともに、真に労働者保護につながる有期労働規制に向けて今後も運動を続けることを改めて宣言する。

 2011年12月28日
                       民主法律協会
                              会長 萬井 隆令

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