2024年12月19日、大阪府市と国土交通省は、大阪・関西万博開催期間中の交通需要に対応するために、大阪府内で「日本版ライドシェア」の規制を緩和することを合意した。これにより、運行エリアが大阪府内全域に拡大され、24時間常時運行できるようになった。同月20日からは大阪府内において試験運行も行われている。
「日本版ライドシェア」とは、普通第一種免許を取得して1年以上の運転手であれば、旅客運送法上求められる第二種免許をもたなくても、タクシー事業者との間で雇用契約を締結することで自家用車を用いて旅客運送することができる制度であり、2024年4月に東京都内で始まったのを皮切りに、全国各地で運用されている。これ自体、「白タク」の合法化にほかならず、タクシー事業の適正化・安全化を図るための政策・取り組みをないがしろにするものであり、また歩合給を基本とするタクシー運転手の労働条件悪化につながる可能性が高い。これまでは、「日本版ライドシェア」の運用は「公共の福祉を確保するためにやむを得ない場合」に限られており、具体的には国土交通大臣の許可を受けた場合に一定の制限(タクシー需要の高い一部の曜日や時間等)の下でのみ認められていた。
ところが、上記大阪・関西万博期間中の運用は、上記制限を大幅に緩和するものである。大阪府内の交通量を無用に増加させる可能性が否定できず、タクシー運転手のさらなる労働条件悪化を招きかねないことはもちろんのこと、大阪府内の公共交通の安全にも支障を来しかねない。さらには、このような安易な規制緩和は、今後、諸外国で行われているような、事業免許をもたない運転者が個人事業主として利用者から運送を請け負う「ライドシェア」を許容する新法の制定につながりかねない。「ライドシェア」全面解禁は、タクシー運転手の労働条件悪化だけでなく、公共交通の安全性をもさらに脅かすものであるし、加えて個人事業主とされる運転手を不安定な地位に晒すこととなる。
そのため、大阪のみならず、全国の公共交通を支えるタクシー運転手の労働条件の悪化を防ぎ、また安全な公共交通を維持するために、大阪・関西万博開催中の「日本版ライドシェア」の規制緩和を撤回するよう求める。
2025年2月15日
民主法律協会2025年権利討論集会