民主法律協会 会長 豊川 義明
1 年頭にあたり被団協代表である田中煕巳さんのノーベル平和賞受賞の演説(12月10日)を読みました。田中さんは「人類が核兵器で自滅することのないように!!そして核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて共に頑張りましょう」と締めくくられています。日本政府が原爆被害者に国家補償を行っていないことも告発されています。ガザにおけるイスラエルの人道逸脱の戦争行為、ロシアによるウクライナ侵略の長期化など戦争行為は今なお行われています。政府は国家予算の2%を超える軍事費を、国債発行をあてに支出しようとしています。辺野古では軟弱地盤への無謀な杭打ちを始めました。一方、一年を経過した能登の震災関連死の方々は増えていますし、珠洲、輪島は復興に程遠い状態です。
2 昨年の衆院選挙(10月27日開票)には、政権与党の自公が過半数割れしました。この結果は、当初の予想とは異なったという報道もありますが、2012(2013)年からの安倍政治に対する国民の大きな不満に「裏金問題」から火がついたものです。閉会した(12月24日)臨時国会では、国民主権に反する企業、団体献金の3月末までの先送りなどこれからの大きな課題です。しかしこれまでの反対といわせた上での強行という国会運営はとれなくなり、石破政権も野党の分断をすすめる国会運営へ変化しています。私達の生活要求と政治要求を実現する社会運動の強化が求められています。
3 2024年の子どもの出生数は68万7千人程度で23年より5.5%減少しました(朝日新聞2024・12・25)、婚姻数は推計47万5千組で23年から横ばい、といいます。夫婦(親)の間で子どもを産み育てることに経済的、社会的な支援がない、子供達の未来が明るくないとの判断があるかもしれません。マスコミはすぐに人手不足論や若人の年金負担の増大など分断論に飛びつくのですが、それこそロボットやIT技術活用や大幅な賃金の増加(それこ5割アップ)に見合う予算措置(中小企業支援も含めて)を、突出する軍事費からまわせばよいだけなのです。
4 現在の自民党政治と経済界には、市民の生存の危機を解決する力はありません。大企業のみが潤う経済システムには手がつけられないのです。株投機に続くのは「投信」による高齢者や庶民からの金の引き出させです。それどころか労働「改革」では、労働基準法の時間法制や労働基準監督署の労働行政を解体する方向をさらに目論んでいます。政府がジェンダー平等の是正、総労働人口の37%にもなった非正規労働者の減少や賃金格差の是正には一声をあげることもありません。これらは自由な市場と個々の企業に託せればよいというものです。高野対三菱樹脂判決(昭和48年12月12日)の「採用の自由」論に続く1995年日経連の「新時代の日本的経営」の思想(考)を維持しているのです。
5 さて衆院選での自公の過半数割れは立憲主義と民主主義の復権と国民生活改革運動の前進に大きな力となることは確実です。これまでの10年以上にわたる自民党政治とその経済政策は、反対があっても強行するという「数の力」を喪ったのです。2025年1月24日から始まる通常国会(6月22日まで)では、市民と労働者の大切な要求を掲げて野党に企業、団体献金の禁止も含めて国民生活に「眼」をむけた政治の実現を求めていきましょう。トランプ大統領は「アメリカ第一」主義で日本に過大かつ不公正な要求を求めてくるだけに野党も含めて日本の国益を正しく守ることが問われます。韓国の尹大統領により昨年12月3日出された戒厳令は市民と議員による運動で4日には解除(決議)されましたが、この立憲主義に反する暴挙に石破首相が、重大な関心を持って事態を注視する、という態度を表明したことに驚くとともに、憲法改悪の危険性を示したものといえ民主主義と人権擁護運動はこれからが正念場といわなければなりません。大阪では維新による税金の無駄遣いとなる危険な万博と市民を不幸に呼び込むカジノをやめさせる運動もなお重要です。
平和に生きる権利、立憲主義確立のため正義と連帯の社会運動を前進させましょう。